作家としての自分は「あまり器用な方ではない」と綿矢さん。
「テーマに沿って文体や小説の長さを変えたいとは思いますが、意識的に変えようと思ってできるタイプではないので、自然に任せます。この場面を描写したいという欲、かけらみたいなのがだんだん集まって話ができてくる感じですね。
17歳でデビューして、小説を書いてなかったときのことをもう覚えていないです……。この20年は、すごく短く感じます。成長と退化をくりかえす日々が続いて、10代で書けていた描写が、そのこと自体に興味がなくなったり、観察眼が失われてたり。増えていくものもあれば失うものもあり、トントンで、ゆっくり進んでいってますね」
【プロフィール】
綿矢りさ(わたや・りさ)/1984年京都府生まれ。2001年『インストール』で文藝賞を受賞しデビュー。早稲田大学在学中の2004年、『蹴りたい背中』で史上最年少となる19歳で芥川賞を受賞。2012年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞、2020年『生のみ生のままで』で島清恋愛文学賞を受賞。ほかの小説に『夢を与える』『勝手にふるえてろ』『ひらいて』『憤死』『私をくいとめて』『意識のリボン』『オーラの発表会』など、エッセイに『あのころなにしてた?』がある。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2022年9月1日号