それぞれの“主戦場”で確固たる立ち位置を築いた作家と映画監督。そんな二人が初めてタッグを組んだのが映画『アキラとあきら』(全国東宝系)だ。8月26日の公開を前に、原作者・池井戸潤氏と監督・三木孝浩氏に「物語」に懸ける思いを存分に語り合ってもらった。
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“純米大吟醸”のような青春映画
三木:映画『アキラとあきら』のお話を最初にいただいたときは、「え、僕が池井戸作品を撮ってもいいんですか?」という気持ちでした。マーベルシリーズに参戦するようなつもりで、是非やらせていただきたいとお受けしました。
池井戸:素晴らしい作品に仕上げていただき、感謝しています。
三木:僕が普段手がけている映画は10代、20代の恋愛ものが多いので、それとはテイストの異なる作品をオファーされたということが、まずうれしかったですね。そして原作を読ませていただいて、池井戸さんのこれまでの作品同様にエンタテインメント性を持ちながら、この物語からは青春の要素を強く感じました。竹内涼真くん演じる、幼い頃に家業の倒産を経験した山崎瑛と、大企業の御曹司として生まれ育った横浜流星くん演じる階堂彬、境遇の異なる二人のブロマンス(=男性同士の熱い友情を描いた物語)であり、お互いを高め合っている彼らの関係性がすごくいい。それを表現することが、僕に期待されたことなのだろうなと。
池井戸:試写を観ましたが、ビジネスシーンを描いた作品としても高次元でまとまっていましたし、20代の若者の青春ものとしての完成度も非常に高い。主演のお二人のファンの方々が観てうれしいものである一方、ビジネス経験のある50代以上の観客にも納得のいく内容だと思います。原作の持つさまざまな要素を45パーセントくらいまで精製した、酒でいうなら“純米大吟醸”のような、清々しい仕上がりでした。
三木:大吟醸!
池井戸:何より、僕の映像化作品の中で、原作がもっとも素のままに表現されていて……。これまでお約束になっていた派手なアクションや演出がなく、ようやく小説と等身大の映像を世に出していただけるんだということが本当に感慨深いです。
三木:ハハハ。僕としては、これまで映像化された池井戸作品の存在があったからこそ、それを逆に利用して、いい意味でイメージを裏切れたらなという思いもありました。企業が舞台の作品は初めてで、ビジネスの現場を描く難しさはありましたが、たとえばスポーツものの映画などで、皆がルールを知らなくてもハラハラドキドキさせたり、絶体絶命のところから逆転するカタルシスみたいな見せ方は、意外とできたりする。法廷ものなんかも、そうだったりしますよね。そういうところからヒントを得て作っていきました。