自然の中にいる姿を楽しむというスタンス
荻野目の昆活のスタンスは、自然の中にいる姿を楽しむというものだ。
「私の場合、実は虫を捕まえてしまうのは、あまり気が進まないんです。虫かごに入れたりして囲ってしまうのは、虫にとって不幸な感じがして。自然の中で、生き生きとしている場面を見るのが好きです。
地方在住の知人のところに、娘たちを連れてクワガタ観察に行ったことがあります。そのとき、私の肩にナナフシが止まったんですよ。知ってますか? ナナフシ。木の枝そっくりで、夜行性なので昼間はじっと動かないから、見つけるのが難しい虫です。生まれて初めて“生ナナフシ”を見たのでとても感動しちゃって。王道のカブトムシやクワガタも魅力的ですけど、この世のものとは思えないような不思議な形をしていたり、ちょっと変わった虫の方が、ロマンを感じるんですよね」
2020年には『みんなのうた』(NHK)からのオファーを受け、『虫のつぶやき』という虫を題材にした曲を作った。
『僕はチョウじゃないガ 嫌われるのさ みんな区別もつかないくせに』 『僕はゲジゲジ 怖がられるけど 強い相手も退治できるのさ』
ウクレレの軽快な音色に乗せて、ちょっと笑えてちょっと切ない、命の輝きと儚さへの思いを込めた。
「伝えたかったのは、多様な昆虫がいることを通して、相手の気持ちになって考えることの大切さでした。見かけは気持ち悪い昆虫にだって、実は害虫を退治してくれる『益虫』もいる。そういうことを知ってもらえたら、人に対してもいろんな見方があって、1つの側面だけで判断したらいけないということがわかりますよね。
これまでにもたくさんの人に私の歌声を聞いてもらいましたけど、『虫のつぶやき』を自分で書いたときには、また全然違う喜びがありました。
『虫のつぶやき』は、最初に娘たちに聞いてもらいました。特に三女は、“いい歌だね。感動したよ”って。娘たちが幼かった頃、自分の歌はあまり聴かせたことがなかったんです。テレビで80年代特集をして私の姿が映っても、“なんだか不思議だな”くらいに感じていたと思います。だから余計に、私の歌を娘たちに聞いてもらえてよかったです」
自身のYouTubeチャンネルではカメムシやガガンボの“生け捕り方法”まで紹介している。