2011年(上)と2022年の門司港駅(下)。正面の庇が取り払われファサードと呼ばれる建物の顔部分全体が見えるようになった(2枚とも撮影:小川裕夫)

2011年(上)と2022年の門司港駅(下)。正面の庇が取り払われファサードと呼ばれる建物の顔部分全体が見えるようになった(2枚とも撮影:小川裕夫)

 復原は図面や資料を元にして忠実に再現するように努めるが、それでも現代技術を用いていたり、社会環境に応じた変化を付け加えたりすることもある。

 平成に入るまではバリアフリーの概念が希薄で、城や神社といった歴史的な構造物にエレベーターやスロープが設置されることは稀だった。しかし、復原でエレベーターや防火設備を追加設置することは一般的になっている。

 建築や歴史など文化財によく関わる専門家は復原と復元を明確に使い分ける向きが強くなっているが、一般的には復元の文字が充てられることが多い。いまだ復原は馴染みが薄いものの、東京駅の赤レンガ駅舎で復原を使ったことから以前に比べると目にする機会は増えている。

 なぜ、赤レンガ駅舎の屋根が、建築当初の形ではなく八角形になっていたのか? それは、戦争によって屋根が焼失したからだ。戦後の復興の際に、赤レンガ駅舎は応急処置的に八角形の屋根で再建された。戦後の混乱が収束した頃に丸型ドームに戻す予定だったようだが、結局は八角形のまま平成を迎えた。

 元の丸型ドーム屋根に復原する動きは、石原慎太郎都知事(当時)が当時のJR東日本社長に打診したことが発端になっている。資金調達などの問題も山積していたが、歴史・文化的な考証を経て、赤レンガ駅舎は丸型ドーム屋根へと戻った。

 東京の顔ともいえる赤レンガ駅舎の復原は、大きな注目を集めた。一般的には復原によって赤レンガ駅舎のデザインが美しくなるのか? が焦点になっていたが、建築や歴史の専門家からは、どのような形に戻すのか? 文化財としての価値はどうなるのか? といったことに関心が集中した。復原時に赤レンガ駅舎は重要文化財に指定されていたから、それを変更することへの工事スキームが今後の参考になることもあっただろう。

重要文化財指定された後に行う「復原」の難しさ

 全国には東京駅と同様に、地域住民から長らく愛されている駅舎がある。特に福岡県北九州市に所在する門司港駅は、赤レンガ駅舎よりも早い1988年に重要文化財指定されるなど、鉄道史・建築史・地域史・美術史などの観点からも重要な駅でもあった。

「門司港駅が重要文化財に指定された後も、駅舎は小規模な補修を繰り返しながら使用していました。しかし、経年劣化が進行していたことから2004年に文化財建造物保存技術協会に調査を依頼し、翌年から関係機関との協議を開始しています。2011年から駅舎を分解しながら調査を実施し、復原するかどうかを判断しました。門司港駅の復原に関しては工費も増えるわけですが、それは国や福岡県・北九州市からも補助を受けることで解決しました」と説明するのはJR九州広報部の担当者だ。

 公共性・公益性が強い鉄道事業者とはいえ、JR九州は民間事業なので費用対効果や収支は気になるだろう。しかし、それ以上に困難を要したのが、門司港駅をどのような姿に復原するのか? だった。

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