大前提として、「ワクチンを打つことはそもそも体に異物を入れることであり、本来、体が備えている自然な免疫力を下げるので、感染しやすくなる」と主張する研究者も少なくない。
さらに言えば、モデルナ社もファイザー社も、「2価ワクチンを接種した人が、どれだけオミクロン株の感染率を下げたのか」という感染予防効果を直接的に示すデータは一切公表していない。効果のほどはますます怪しいのだ。
第7波を招いた「BA.5」には非対応
懸念はほかにもある。今回、日本が導入する2価ワクチンは、「オミクロン株対応」という触れ込みだ。しかし、オミクロン株にもいろいろある。今年初旬の第6波を招いた「BA.1」も、第7波を招いた「BA.5」も、オミクロン株だ。
実は、日本でこれから打たれるワクチンは『BA.1対応型』であって、感染力のより強い「BA.5」には非対応。要は、“半年前に流行した感染力の弱い株”をターゲットにしたワクチンなのだ。
ちなみにアメリカでは『BA.5対応型』のワクチンの接種が始まる。
では、『BA.1対応型』の2価ワクチンは、「BA.5」にも効果があるのか。
「ファイザー社もモデルナ社も、日本で承認された2価ワクチンを接種しても、『BA.5』に対する中和抗体の値は、『BA.1』の3分の1ほどしかできないというデータを公表しています。
より感染力の強い『BA.5』への感染予防効果は期待しづらいと考えています」(小島さん)
血液内科医の中村幸嗣さんも同様の意見だ。
「もちろん同じオミクロン株の枠内なので、従来のワクチンよりは効果があると考えられますが、『BA.5』専用ではありません。従来型ワクチンと飛び抜けて効果に差はなく、“どうせ打つなら2価の方がいいでしょう”という程度だと考えています」
さらに、ウイルスはいまも変異を繰り返している。今年6月には、より感染力の強い「BA.2.75」が確認された。このウイルスにも効果があるかを専門家に問うたが、データが不充分かつ未知の部分が多く「わからない」と口を揃えた。
当初、ワクチンは「95%の感染予防効果がある」として接種がスタートした。それがいつの間にか「重症化予防」に目的が切り替わった。しかし2価ワクチンに関しては、重症化予防の側面も期待できそうにない。
「そもそも重症化を防ぐのは『細胞性免疫』で、これは一度ワクチンを打てば、ウイルスが変異しても効果を発揮できます。従来型のワクチンを3回接種していれば、変異株に対しても重症化を防ぐことができると考えられるのです。2価ワクチンの重症化予防効果はおそらくあると考えられますが、確実なエビデンスはまだありません」(中村さん)
もちろん、感染するとリスクが高い基礎疾患のある人や、60才以上の高齢者は打っておいた方がいいという。
未解明の部分が多い感染症と、未知のワクチンだけに、慎重な判断が求められる。
※女性セブン2022年9月22日号