国際情報

上海市トップの辞職を求めた中国人権活動家が拘束される 党大会での人事も関係か

10月に控える第20回党大会も影響か

10月に控える第20回党大会も影響か

 上海の人権活動家の季小龍氏が9月初旬、市トップの李強・上海市党委員会書記の新型コロナ対策を批判し、辞職を求める勧告書を公開したなどとして、地元警察に身柄を拘束されたことが明らかになった。季氏は今年2月9日に刑務所から釈放されて以来、警察に連行されるのは7回目で、今回は正式に刑事拘留されたという。10月の第20回党大会を控えて、自身の党最高指導部入りに支障が出ることを恐れた李書記の指示があったとみられる。中国の人権問題を論じる「維権網(ネット)」が報じた。

 46歳の季氏は上海市浦東地区の外国人居住区に住んでおり、中国で禁止されているTwitterのフォロワーは約3万3000人。大きな情報発信力を持っているということで、当局は警戒していた。

 季氏は2019年、上海の公衆トイレに「共産党を倒せ」と落書き。中国共産党の習近平指導者の終身指導体制を風刺した落書きをしたことで、3年半の懲役刑を言い渡され、今年2月に釈放されたばかりだった。

 季氏は、4月から始まった新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ上海市のロックダウン(都市封鎖)について、「人災だ」などと当局を批判し、上海の地方幹部が中央政府の指示に従わないよう警告するとともに、李氏の退任と重大事案の責任をとることを要求していた。これを受けて、上海梅園新村警察署は季氏の自宅を急襲し、季氏を拘束し、警察署で取り調べている。

 李氏は習近平国家主席のお気に入りで、次期首相の有力候補と目されていたが、首相は副首相経験者から選出されるため、李氏が首相になるには党大会前に副首相になる必要があった。

 ところが、李氏は9月2日に開かれた全人代常務委員会で副首相に選出されなかったため、首相になる可能性はほとんど潰えた。これは、李氏が4月から約3か月間、上海をロックダウンしたことに、市民から強い不満が出たことで李氏の行政能力に疑問符が付いたためだ。

 だが、李氏は10月の党大会で、「チャイナセブン」と呼ばれる党最高幹部である7人の党政治局常務委員の1人に選出される可能性は残っている。

 あと1カ月で党大会という重要な時期に、地元の上海で、自身の失政を批判されれば、党最高幹部選出にも影響が出るのは必至で、その前に執拗に李氏を批判し続ける季氏を黙らせる必要があったではないかとの見方が出ている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
【追悼】釜本邦茂さんが語っていた“母への感謝” 「陸上の五輪候補選手だった母がサッカーを続けさせてくれた」
週刊ポスト
有田哲平がMCを務める『世界で一番怖い答え』(番組公式HPより)
《昭和には“夏の風物詩”》令和の今、テレビで“怖い話”が再燃する背景 ネットの怪談ブームが追い風か 
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《過激すぎる》イギリス公共放送が制作した金髪美女インフルエンサー(26)の密着番組、スポンサーが異例の抗議「自社製品と関連づけられたくない」 
NEWSポストセブン
悠仁さまに関心を寄せるのは日本人だけではない(時事通信フォト)
〈悠仁親王の直接の先輩が質問に何でも答えます!〉中国SNSに現れた“筑波大の先輩”名乗る中国人留学生が「投稿全削除」のワケ《中国で炎上》
週刊ポスト