『呪怨』

『呪怨 劇場版』Blu-ray:2750円 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

『呪怨』シリーズを世に送り出した映画監督の清水崇さんは、Jホラーがその後に与えた影響を次のように語る。

「『リング』(1998年・中田秀夫監督)のようにビデオテープという身近なアイテムを使った設定などが、恐怖をよりリアルに感じさせ、各国で人気を博しました。その後、どこにでもありそうな家で起こる恐怖をテーマにした作品は、韓国や台湾の作品でも見られるようになりました。歴史や風土、生活習慣がアジア全体で似ているからスムーズに受け入れられたのかもしれません」(清水さん・以下同)

 欧米作品と一線を画したJホラーの手法が衝撃をもって迎え入れられ、アジア作品にも広がっていったのだ。

「欧米の作品は怪物や殺人鬼が襲ってくる直接的表現が主流なのに対し、Jホラーを含むアジア圏では、間接的に“ぴちゃ”とか“ガタ”など効果音でそこに“何かいる”と感じさせたり、あえてボンヤリさせ、見せきらない気配でジリジリと追い詰めていく表現が多く見受けられます」

 韓国には“恨”という言葉があり、それがベースになっている作品が人気を得ているという。

 ちなみに、“恨”とは恨みだけではなく、悲しみや怒り、悔しさが入り交じった複雑な感情を表しており、2019年に世界的に大ヒットし、アカデミー賞作品賞を獲得した『パラサイト 半地下の家族』も“恨”がベースとなっている。

「日本も韓国と似たような題材があるものの、韓国の方がもう少し恐怖の表現が複雑で、社会風刺を織り交ぜながら家族愛や人間ドラマを深く描いている。なぜなら韓国は、国を挙げて映画製作をサポートしているので、若手が育ちやすい。優秀な俳優やスタッフも見過ごされず、素晴らしい映画が次々と登場している印象です」

【プロフィール】
映画監督・清水崇さん/代表作に『呪怨』シリーズ(1999〜2006年)、映画版『呪怨2』(2003年)、『犬鳴村』(2020年)などヒットを連打している日本ホラー界の巨匠。

ホラー映画取締役さん/ツイッターで世界中のホラー映画情報を取り締まり、紹介する会社の代表取締役(@torishimaru)。フォロワー数は2万4000人以上。

ホラープロデューサー・夜住アンナさん/お化け屋敷の枠を飛び越え、独自の感性で“美しく怖いホラー”の世界を創り出すアーティスト兼イベントクリエーター。

社会心理学者・山根一郎さん/椙山女学園大学教授。「恐怖の現象学的心理学」が研究対象だが、怖がりで、ホラー映画は苦手だという。

取材・文/廉屋友美乃

※女性セブン2022年10月13日号

清水崇監督

清水崇監督

関連キーワード

関連記事

トピックス

第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
花の井役を演じる小芝風花(NHKホームページより)
“清純派女優”小芝風花が大河『べらぼう』で“妖艶な遊女”役を好演 中国在住の実父に「異国まで届く評判」聞いた
NEWSポストセブン
2000年代からテレビや雑誌の辛口ファッションチェックで広く知られるようになったドン小西さん
《今夏の再婚を告白》デザイナー・ドン小西さんが選んだお相手は元妻「今年70になります」「やっぱり中身だなあ」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「王子と寝ろ」突然のバス事故で“余命4日”ののち命を絶った女性…告発していた“エプスタイン事件”【11歳を含む未成年者250名以上が被害に】
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
ナンバープレートを折り曲げ集団走行する「旧車會」=[福岡県警提供](時事通信フォト)
《各地で増える”暴走”》駐車場を勝手に旧車會の集合場所とされた飲食店主「100台以上も…他のお客さんが入って来られん」と怒り
NEWSポストセブン
世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン