ファン感謝祭でチェス対決に臨んだ元・白鵬の宮城野親方。真剣な表情で盤上を見つめる(時事通信フォト)

ファン感謝祭でチェス対決に臨んだ元・白鵬の宮城野親方。真剣な表情で盤上を見つめる(時事通信フォト)

元横綱でも出世するとは限らない

 引退後も注目されるのは、元・白鵬を超える人気・実力を備えた現役力士がいないことも関係あるだろう。一人横綱の照ノ富士は金星配給マシーンとなり、大関陣は“クンロク(9勝6敗)”どころかカド番を繰り返している。若隆景、宇良、遠藤ら人気力士はいるが、本場所の主役と呼べる地位までは上がっていない。

 元・白鵬が引退後も現役力士以上の人気があり、若手親方から支持を集める様子は、かつての「平成の大横綱」の姿に重なるという見方もある。相撲ジャーナリストは、「協会内の勢力争いに敗れて退職した元横綱・貴乃花も、引退した当初、ファンはもちろん、若手親方からリーダー的な存在として見られていた」と振り返る。

「現在の協会執行部は白鵬にはしっかり雑巾がけから始めてもらうという考え方だが、ここが我慢のしどころでしょう。この地道な仕事が嫌になってしまうと、貴乃花のように“飛び級”を狙って政治工作を始めることになりかねない。協会内の特に執行部の親方衆には白鵬が貴乃花のように人気親方の階段を上がっていくことに危機感を持つ親方が少なくない。

 親方には昇進試験があるわけでもなく、協会内での親方の出世は執行部の胸三寸。元横綱でも武蔵丸(武蔵川親方)のように役員待遇にもなれない者もいる。無理にでも道を開こうと思ったら貴乃花のように一門の調整を無視して理事選に出馬していくしかないが、貴乃花の場合はまだ北の湖や大鵬(いずれも故人)といった重鎮の後ろ盾があったから理事当選が実現した。弱小の伊勢ケ浜一門に所属する白鵬としてはなかなか道筋が拓けず、モンゴル出身の親方衆を取りまとめるくらいしかやり方がないでしょうね」

 年功序列の色合いが強い相撲協会で元・白鵬はどこまで地道なステップを踏んでいけるのか。白鵬人気が際立つなかで、“第二の貴乃花”にならないかも関係者の間では注目されているようだ。

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