「擬陽性」のリスクも
胃がん検診のバリウム検査は苦手な人も多いだろう。この検査は「危険を伴ううえ、無意味な可能性」が指摘されている。東京国際クリニックの宮崎郁子副院長の解説。
「空腹状態で造影剤のバリウムと発泡剤を飲み、検査台を回転させながら、バリウムが食道から十二指腸を流れる様子をレントゲンで撮影します。負担が大きいうえ、検査台に寝かされて5~10分程度X線を照射するため、胸部X線検査以上に被曝量が高まります。また、検査の際にバリウムが腸内で固まって便秘になったり、ごくまれに腸に穴が開く『穿孔』のリスクもあります」
早期胃がんを発見する精度では胃内視鏡検査(胃カメラ)のほうが高い。しかも、胃がんの原因の9割以上が「ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)」の感染によるものといわれるなか、全ての人がバリウム検査を受ける意味は薄れている。
「ピロリ菌の有無などを血液検査で調べる『ABC検診』を受け、ピロリ菌感染があればできれば50歳までには除菌をして、胃内視鏡検査を1年に1回定期的に受けるのが望ましい。内視鏡検査は粘膜の微細な変化まで観察でき、異変が見られれば生検によって悪性か良性かの確定診断も可能です。除菌した人は積極的に受診してほしい」(宮崎氏)
大腸がん検診は、便を採取して血などが混じっているかどうかを確かめる便潜血検査を行なう。
「体への負担が少なく被曝のリスクもありません。ただし、血管が脆くなる高齢者は排便時に痔などで出血しやすく、実際は陰性でも陽性の結果になる『擬陽性』が出やすい」(前出・岡田氏)
精度を上げるため、便潜血検査を2~3回に分けるケースもあるが、一度でも陽性なら精密検査に進まなくてはならない。
前出の宮崎氏は、「便潜血検査に加え、大腸内視鏡検査も重要」という。
「がんになる可能性のある『大腸腺腫』というポリープは小さいと出血を伴わないため、便潜血検査では発見しにくいのですが内視鏡検査では見つけられます。そのうえ、早期であれば検査時に切除が可能。40歳以上で家族に大腸がんの人がいるなら、2~3年に1回は内視鏡検査を受けるといいでしょう」