リッチ・デヴォス(中央)は米プロバスケットボールNBAオーランド・マジックのオーナーとしても知られていた。写真は2009年(AFP=時事)
さらにインターネットが今ほど普及していない当時、ダイレクト・セリングには違う価値もあったとロビイストは述べていた。その価値とは人物や地域に関する情報だ。ネットで簡単に情報が取れ、辺境な地でもドローンを飛ばせば状況が把握できる今と違い、以前は辺鄙な地域や発展途上国の情報をリアルに入手するのは困難だった。どこにどんな人たちがいるのか、どんな生活をしているのか、そんなことを知ることすら簡単にはいかなかったのだ。
ところがダイレクト・セリングという商売はどんな場所にも、どのような相手にも展開できる。中国の少数民族が住む秘境でも、アンデスの山奥でもディストリビューターと呼ばれる彼らは、商品を持って直接、販売しに行く。結果、彼らが現地を歩くことでその地域や国の情報も手に入る。このビジネスは一度売ったら終わりではなく、継続性があるため、情報も継続して入ることになる。この情報が貴重なのだとロビイストは言った。アムウェイなどは世界100以上の国と地域でビジネス展開してきている。そこにはグローバルな情報ネットワークという意味合いもあったというのだ。
真意のほどは定かではない。もしそれが本当なら、政財界の関係者らは、外交ルートなどを通じて入手できる情報以上のものが、リアルに手に入った可能性はあるだろう。「使えるものは、どのようなものでも味方に取り込むのが米国流」とロビイストは語っていた。スティーブ・ヴァンアンデル氏は2013年、民主党オバマ政権の時にも全米商工会議所の会頭を務めている。日本とは全く異なる企業の捉え方に、日米の政財界における視点の違いを見た気がした。
全国の消費生活センターに寄せられた日本アムウェイに関する苦情相談件数は、2019年度317件、2020年度257件、2021年度270件、2022年度(9月15日時点)109件にのぼっている。
日本アムウェイは今回の処分を受け、「本件を厳粛に受け止めております。いかなる違法行為も許さない姿勢で、実効性のある業務改善と再発防止対策を講じてまいります」などとするコメントを発表したが、さらなる自浄作用が求められている。