我々にはできないことをやってくれた
実際のメール文面
A氏のメールは記者たちの大きな反響を呼んでいる。共同通信関係者が語る。
「Aさんは役職も高く、社内では政治部長と同じくらいの影響力がある名物記者です。常に反権力、権力を監視するという姿勢で記事を書き、国内政治だけでなく人権問題や外交にも造詣が深い。言論で戦うという昔ながらの記者魂を持った人物で、国葬を問題視する記事もかなり書いていました。
政治部内での受け止めは、『我々にはできないことをやってくれた!』という感じだそうです。Aさんがメールに綴っていたことは彼らからしたら『まさにその通り』という感じで、『よくやってくれた』と言っている人が多かった。Aさんがやったこと、メールに書いたことに反対している人は一人もいなかったようです。
とはいえ、一社員が社長批判をするのは本当にすごいことだし、なかなかできない。常に権力と戦ってきたAさんだからできた、という受け止め方をしています」
別の共同通信関係者はこうも言う。
「うちの社では、国葬は『あれはまずかったよね』という論調です。そこに社長が参列したら、我々記者の活動に示しがつかないという声もありました。今回送られたメーリングリストは政治部全員が閲覧できて、普段は機密性が高くない大臣や自民党幹部などの記者会見の内容などをアップして記者で共有している。機密性が高いオフレコ懇談のメモなどの送信には絶対に使うなと徹底されているものです。
わざわざそのメーリングリストを使ったということは、Aさんは仮に外部に知られてもかまわないと考えていたのではないでしょうか」
共同通信社はA氏の問題提起をどう受け止めているのだろうか。同社総務局はこう回答した。
「(国葬主催者に)報道機関として参列するかどうかを聞かれて検討した結果、弊社を含む国葬の是非を巡る報道とは別にして、故人に弔意を示すために社を代表して水谷亨社長が参列しました。なお、一般論として、社内議論の一つ一つについてコメントすることは差し控えております」
果たしてA氏の行動は、報道機関が「社会の木鐸」としての役割に立ち返るための“蟻の一穴”になるだろうか。