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蛯名正義氏が語る秋の天皇賞 スピードとタフさが要求される「フェアなレース」

「僕は跨がっていただけ」の真意とは

天皇賞の注目ポイントは?

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、秋の天皇賞についてお届けする。

 * * *
 今回が第166回の歴史あるレースです。レース名がレース名だけに僕たちよりずっと上の世代にとっては特別なレースで、何としてでも勝ちたいとおっしゃる方が多かった。今の1着賞金は2億円で、ジャパンカップや有馬記念の4億円には及ばないけれど、表彰式では馬主さんに菊の御紋が入った「天皇盾」が手渡されます。

 春の天皇賞を「春の盾」、秋の天皇賞を「秋の盾」と呼んだり、天皇賞を14回も勝った武豊騎手を「平成の盾男」なんて言ったりします。競馬で「盾」といえば天皇賞のことです。

「盾」は天皇陛下からの賜りものですから馬主さんは白い手袋をして受け取らなければなりません。表彰式で受け取ったものの、馬主さんは盾を手元に置いておけるわけではなく、次の天皇賞まで競馬場の金庫に保管されるそうです。それでも馬主さんにとってはとても名誉なこと。天皇賞は春秋合わせて4回勝っていますが、僕が触らせていただくなんてとんでもないことです。

 そんな重みのあるレースであると同時に、直線の長い東京競馬場の2000mで行なわれるということで、その重要度は高まるばかりです。道中一息入れられるほどペースが緩むことがなく、逃げ切れるほど甘くはないし、あまり後ろから行っては届かない。スピードは絶対条件ですが、アップダウンのあるコースなどでタフさも要求されます。それでいてコースは広く、直線が長いのでごまかしがきかない。ある意味、とてもフェアなレースです。

 僕は1996年、バブルガムフェローに騎乗して初めてGIを勝ちました。3歳馬が世代限定の菊花賞ではなく、こちらへ向かったことは当時極めて異例、そして勝ったのは戦後初めてでした。今年2月で引退された藤沢和雄先生の信念に基づいた決断で、その6年後の2002年には、やはり藤沢厩舎のシンボリクリスエスが3歳でこのレースを勝ち、昨年のエフフォーリアがシンボリクリスエス以来の3歳馬での勝利でした。

 そして今年は皐月賞馬ジオグリフと皐月賞・ダービーでともに2着だったイクイノックス、ともに4着だったダノンベルーガといった有力3歳馬が参戦するとのこと。迎え撃つのは昨年のダービー馬シャフリヤールということで、世代間対決が最大の見どころでしょう。

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