ライフ

3年ぶりの祭り開催 地域での賑わい戻らず舞や囃子など文化継承に暗雲も

例大祭には集落の住民だけでなく、都市部に暮らす親戚や他地域の人たちも集まり賑わったものだった(イメージ)

例大祭には集落の住民だけでなく、都市部に暮らす親戚や他地域の人たちも集まり賑わったものだった(イメージ)

 継承されてきた伝統や文化財は保存するべきだと思う人が多いだろうが、現実は厳しい。事実、小さな集落で受け継がれてきた祭りのお囃子や、独特の舞などが人知れず存亡の危機にある。3年ぶりに行われた祭りに喜んでばかりもいられない地域の本音を、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 雲一つない秋空の下、九州北部の集落にある古びた神社に近隣に住む高齢者ばかりが5~6人集った。そこは小さいとはいえ歴史の古い神社で、3年ぶりに新型コロナウイルスの影響で中止になっていた「例大祭」が執り行われているのだが、出店もなければ見物客の姿も見当たらない。

「誰も来やせん(来ない)。見ての通り、年寄りがチョロっと集まるだけ。永く続いたこの祭りも終わりですよ」

 大きなため息をつきつつ筆者の取材に答えてくれたのは、地区長を務める林誠一さん(仮名・70代)。新型コロナの感染者数が落ち着き、祭りやイベント事に、多数の客が押し寄せている、というニュースを見ない日は無くなったが、林さんの心中は穏やかではない。

 秋の収穫を祝う例大祭は、言い伝えによると100年以上続いているもので、かつては地域の人たちだけでなく、近隣地区からも見物客が集まるにぎやかなものだった。しかし、地元の主要産業であった炭鉱が閉山すると、町の人口は往時の半分以下にまで減少。林さんの暮らす地区も過疎化が進み、保育園や小学校までもが無くなり、神社の氏子のうち、存命なのは林さんを含めたわずか10数人ほど。少ない人数ながらも、地元有志でなんとか守ってきた祭りの復活へ向け準備をすすめ当日を迎えたが、晴れ晴れしさよりも、先行きのことを考えて暗い気持ちになってしまう。

「せっかく祭りが復活してもね、氏子は年寄りばかりで、コロナに感染したらたまらないと誰も来ない。こうやって数人集まったが、みんな70代80代の後期高齢者。例年、祭りには議員や市長も来ていたのに、今年はそれもない。文化伝承やら地域興しやら言うけど、事態はもっと深刻」(林さん)

 一方、林さんの居住地から10数キロ離れた別の自治体で開催された秋祭りには、多くの参加者、そして観客も詰めかけ、コロナ前の賑わいを取り戻しているという。

「都市部で開催される、子供や若者が集まってワイワイやるタイプの祭りには、今も人が多く集まっている。地元のケーブルテレビや新聞はこぞって取りあげるが、我々は無視されているような気持ち」(林さん)

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン