スポーツ

初の単独アイスショー開催 氷上の芸術家・羽生結弦は「伝説の人」から「歴史の人」へ

2022北京冬季五輪、フィギュアスケート男子フリースケーティングで演技する羽生結弦(SPUTNIK/時事通信フォト)

2022北京冬季五輪、フィギュアスケート男子フリースケーティングで演技する羽生結弦(SPUTNIK/時事通信フォト)

 ISUグランプリシリーズが始まり、今年もまたフィギュアスケートの季節になった。週末ごとに日本人選手の活躍が報じられる中、プロ転向後も五輪2大会金メダリストである羽生結弦に関しての報道は絶えることがない。11月4日は横浜で「プロローグ」の幕が開く。プロ転向後初のアイスショーを前にした羽生が歩む、唯一無二の芸術性への道について、俳人で著作家の日野百草氏が綴った。

 * * *
 歴史に名を残す人物は、まず「記録の人」「記憶の人」「結果の人」の3つに分かれる、もしくはこの複数を、あるいはすべてを併せ持つ。

 これに「時代の人」(「時代の子」)という要素が加われば「伝説の人」になる。そして長い年月を経て「歴史の人」になる。

 羽生結弦という「氷上の芸術家」がすでに「伝説の人」であることに疑いはないだろう。いま彼は、その先にある「歴史の人」への道を歩んでいる。

 いよいよ羽生結弦が出演、自らプロデュースも手掛ける単独のアイスショー「プロローグ」が11月に横浜、12月に青森県の八戸市で開かれる。

 他者の採点という呪縛から解き放たれた芸術家、羽生結弦。

 もちろん、羽生結弦がこれまでそれを克服し続けてきたこと、これからもそうしたアスリートでもあり続けることは周知の事実である。

 2014年ソチ、2018年平昌と五輪2大会連続の金メダルを成し遂げ、男子シングル初のスーパースラム(五輪、世界選手権、グランプリファイナル、四大陸、世界ジュニア、ジュニアグランプリファイナル)の達成者となった彼は間違いなく不世出のアスリートである。真の芸術には確かな基礎が必要であり、例えばパブロ・ピカソの芸術もまた、確かな写生が基礎にある。羽生結弦にも当然それがある。羽生と同じく1948年サンモリッツ、1952年オスロと2度の五輪金メダリストであるアメリカのリチャード(ディック)・バトンが「ブラボー、ハニュウ」と熱狂したのもまた必然である。

 あの2022北京五輪、フリースケーティングのプログラム「天と地と」は、羽生結弦にとって絶対的次元での「芸術の完成」に向けた端緒となった。

 彼は、彼自身の目指す芸術作品の完成を目指した。

 もちろん結果も目指したのは当然だが、作品の完成を目指すことと採点の結果を望むこと、そのどちらが優れているとか上下の問題ではなく、羽生結弦にとって北京五輪とは、これまでのアスリート人生すべてを内包した「芸術表現」の場だった。

 そして、羽生結弦という「オリンピックの子」は、オリンピックの枠には収まらなくなっていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/五十嵐美弥)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン