国葬には約4200人が参列し、自治体の場合は各都道府県の知事と議長、政令指定都市の市長と知事など招待者枠は2人とされた。「3人枠」の大メディアは都道府県以上の“特別待遇”だったということになるが、その一方で地方紙では京都新聞が招待状が来ていないことを発表するなど、経営幹部の国葬参列を公表した社は見当たらない。
政府は大メディアを特別に優遇したのではないか。興味深い証言がある。大手紙記者が語る。
「大手メディアの国葬参列者の割り当ては各社3人ずつで、誰が参列するかは各社が社内で調整して決めたと聞いています」
そうした指摘を裏付けるのが日本テレビ、フジテレビと並ぶ3人が参列した毎日新聞の回答だ。
「安倍元首相の国葬には、森本英彦・社長室次長、三森輝久・東京本社代表室長、丸山昌宏・会長執行役員が出席しました。招待状は国葬儀委員長である岸田文雄首相から送付されました。安倍元首相の国葬を巡っては世論が二分され、毎日新聞も社説で明確な法的根拠がないことや首相の対応などについて問題点を指摘してきました。これらの事情を総合的に考慮し、毎日新聞社は報道機関として、社長以下の役員や編集幹部の参列を見合わせました。ただし、不幸な事件で殺害された元首相への弔意は否定するものではなく、対外的な業務や儀礼行事などの責任者である社長室次長と東京本社代表室長が参列しました。また、丸山昌宏・会長執行役員は日本新聞協会会長を務めていることから出席しました」(社長室広報担当ユニット)
参列者を社内で調整したことをうかがわせる内容だ。政府はどのように大メディアの参列者を選んだのか。
内閣府の故安倍晋三国葬儀事務局に取材すると、「個別の参列者の名前が出る質問にはお答えしません。加えて、参列者の基準は内閣府ではなく、各省庁などで決めているのでわからない」と回答し、さらに「新聞、テレビを選んだ担当の省庁を教えてほしい」と質問したが、回答はなかった。
かつて安倍首相主催の「桜を見る会」が問題化したとき、当時の安倍政権が招待者を隠したのと同じ対応ではないか。
「桜を見る会」問題をめぐっては、新聞・テレビは招待者リストや招待基準を公表せよと政府を批判した。安倍氏の国葬ではなぜ、そうしないのか。