JR上野駅で実証実験が始まった、耳が不自由な人に電車の発着音などの情報を文字などで伝える「エキマトペ」(時事通信フォト)

JR上野駅で実証実験が始まった、耳が不自由な人に電車の発着音などの情報を文字などで伝える「エキマトペ」(時事通信フォト)

 一般的にバリアフリーという言葉からは、身体障害者が不便を感じないように階段の段差をなくしてスロープやエレベーターを設置するといった措置をイメージする人が多いだろう。バリアフリーの取り組みには、そのほかにも視覚障害者が利用しやすいように点字ブロックを設置したり、トイレ付近で「ピンポーン」と誘導音を鳴らすといった工夫もバリアフリーの概念に含められている。

 エキマトペもバリアフリー化の一環で、これらが普及していけば鉄道移動におけるバリアの解消が一段と進む。

「上野駅では京浜東北線の1番線と山手線の2番線にエキマトペを設置して、実証実験をしています。上野駅が選ばれたのは、上野公園があるなど老若男女が利用する駅で、さまざまな人がどのようにエキマトペを感じるのかといった効果を測定しやすいからです。また、上野駅の1番線2番線はホームの幅が広く、エキマトペを設置しても乗降客の支障にならないことも大きな理由です」(同)

 上野駅のホームは屋根が架けられているものの、壁などはなく半屋外なので雨風にさらされる。また、気温や湿度の影響も受けやすい。機械類は、そうした環境によってトラブルを起こす可能性がある。

 筆者はエキマトペが稼働している様子を見たくて繰り返し上野駅へと足を運んでいるが、通信トラブルによって不具合が生じ、システムの復旧作業にあたっている場面に遭遇したことがある。現場に居合わせた担当職員によると、正確な原因を特定するには持ち帰って詳細な分析が必要になるが、「気温が高くなったことによって、何らかの不具合が機械で起きたと考えられる」とのことだった。

 本格稼働をさせる前には、こうした想定外の事態が起きる。無用なトラブルの芽をできるだけ潰しておかなければ、本格的に導入することはできない。いくら便利なシステムでも、安易に導入してトラブルが起きれば、かえって事故を誘発する原因になってしまうからだ。JR東日本は導入に際して、繰り返し実験するといった慎重な姿勢を崩さない。

「上野駅のエキマトペ実証実験は、12月までを予定しています。その後の予定は決まっていません」(同)

 エキマトペの普及には技術的な問題もさることながら、社会における形成合意も必要になるだろう。先述したように、ホームに設置されるエキマトペは混雑時に支障をきたすかもしれない。乗降客から邪魔と思われたら、エキマトペは無用の長物になるだろう。

 そういった意味でも、今井議員がツイッターで発信して周知に努めたことはエキマトペの普及拡大に一役買ったといえる。

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