決して他人事ではない
楽観が骨の髄まで染み込んでいた
自分は家系的に頑健だと思っていたし、体調には日頃から気を配っていた。その自信が不審に変わり、過信だと気づくことに──。
МRI検査を受けたのは8月中旬。検査結果の画像を見ながら30代の体育会系の女医はこう見立てた。
「う~ん、五分五分でしょうか」
ヤバいかもしれない……。検査のたびに悪性の可能性が高くなっていく。
だから、その足で大学病院の門をくぐったときは、それなりに心していた。
でもそれほど深刻に思わなかったのは、最初のネット情報が頭から離れなかったから。
「閉経後の卵巣の腫瘍は90%良性」って断言していたのをどこか頼りにしていた。でも、ネット情報は玉石混淆だ。患者の深刻な体験談もあれば、「学会で発表するの?」と思うほど専門的な医療情報もある。かと思えば、素人が寄せ集めた眉唾なクズ情報もある(むしろ、その方が多い)。
検診を受けない理由は?
気がつくと私は、そこから自分が安心できそうな話ばかりを無意識に選んでいた。
経済的にいつだって崖っぷちのフリーライター生活を45年も続けていて、楽観が骨の髄まで染み込んでいたのかもしれない。
ふだんから自分の体に人一倍気を使っていたつもりだったけど、丈夫な面にばかり目を向けて、不安なことには気づかないフリをしていた。
病は気からというけれど、体は体の事情で回っている。60過ぎた体は、“気”となんの関係もなく回っていることを、おめでたい私は知ろうとしなかったんだわ。
(第2回につづく)
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/空中ブランコや富士登山などの体当たり取材でおなじみ。昨夏から故郷・茨城で母を在宅で介護し、今春、看取った。
※女性セブン2022年11月24日号