かつてネット販売された偽バイアグラ。右端は本物の錠剤(時事通信フォト)

かつてネット販売された偽バイアグラ。右端は本物の錠剤(時事通信フォト)

不労所得になると知人に言われて

 筆者は、Y男のショップでブランドのシャワーヘッドの偽物が売られていた可能性が高いことを告げ、すでに報じられていることを伝えた。すると、がっくりと肩を落とし、押し黙ってしまった。Y男は元損保会社社員。SNS上には、大学卒業後に損保会社で働き始めるも業務内容や賃金が不満だとか、副業に興味がある、アフィリエイトにチャレンジしたい、等の書き込みをしていた。

「ネットショップのことは、私はよくわかりません。不労所得になる、と知人に言われて始めただけで、実際はほとんど何もしていないんです。騙されたのかもしれません」(Y氏)

 Y男は2年ほど前、SNSのコミュニティで見かけた「副業募集」の書き込みを見つけ、投稿者に接触した。その書き込みには「半永久的に月に10万円儲かる」という宣伝文句がついていて、問い合わせたところ「アフィリエイトブログ」を立ち上げ、その広告収入を得る、という仕組みだった。しかし、最初に30万円近い登録料、アドバイス料(コンサル料)が必要だと知り、以後は連絡を取るのをやめていた。一方、コミュニティにはそのまま属していたことから、副業だけでなく、様々な金儲け話がY男に舞い込んできた。ネットショップを立ち上げないか、という誘いは昨年、そこを通じて知り合ったあるインフルエンサーからもたらされたのだという。

「異業種交流会を主催している、ネットでは有名なXさんという人がいて、ネットだけでなくリアルでも会おうということになって、その方を囲んで十数人で集まり飲み会をしたんです。ほとんどお酒も飲まずビジネスの話ばかりでしたが、後日、本気でやるなら紹介してあげると、ネットショップの話を持ちかけられました」(Y氏)

 かつて自分自身のネットショップを開設するのは、自分で複雑なプログラムを書いたりサーバーを維持できる技術力がなければ、専門業者へ依頼しないと難しかった。ところが今では、誰でも何処でも、簡単に開設できるサービスが拡充している。そのためY男も、ネットショップのオーナーになることに抵抗感や違和感はほとんどなかった。むしろ、件のネット有名人・X氏が「誰でもすぐに」「何もせずに金が儲かる」と太鼓判を押すものだから、一刻も早くネットショップを開設して収入を得たいと考えた。しかし、X氏の説明は、かなり不可解なものだったという。

「ショップを運営するのは大変だから、実際には海外の業者が代行してくれ、月の売り上げの10%ほどが私に入ってくる、だから完全な不労所得だと説明されました。ウェブ上で契約書も提示され、名前と住所、連絡先や口座番号を書き込みました。それからすぐ、ショップが開設されたと連絡がありましたが、その間私は、本当に何もしなかったんです」(Y氏)

 実際、開設されたネットショップ(現在は閉鎖)の企業情報を見てみると、自身の名前や住所が記載されていたが、電話番号は身に覚えのない「050」から始まるもので、連絡先として書かれていたメールアドレスもやはり身に覚えのないメールアドレスだった。それから2ヶ月後、X氏とは違う人物から3万円ほどが振り込まれたのだという。しかし、振り込まれたのはその一度だけ。以後、ショップのページを見ても、何一つものが売られない状況が続き、結局この話は流れたのだと感じていたと訴える。

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