本当にそれは女性だからというだけでやらねばならないことなのか?(イメージ)
「女様」と陰口を言われる
性別分業や「女だから男だから」という思考、表現が「時代錯誤である」というのは多くの人の共通認識だろう。だが、「現実はそうとも言えない」と冷笑する人たちは、今なお多く存在する。
「小さな会社なので、オフィスやトイレ、水回りの掃除も社員がやるのですが、そういった雑務は全部女性社員に押しつけられる。男性社員にも”トイレ掃除をお願いしたい”と上司に訴えたところ”覗かれたとか文句を言うなよ”とにやにや笑ってまともに取り合ってくれない」
東北地方在住の木本茜さん(仮名・30代)が勤務するのは、社員10人程度の不動産会社。社員の多くが中高年男性ということもあり、そもそもジェンダーに対する理解のない会社だったというが、対外的には「SDGsを大切にする」企業だと宣伝し、社内にはポスターまで貼ってある。さらに男性社員は、ジャケットにSDGsのバッジまで着用している。にも関わらず、勇気を出して訴えた木本さんの願いは、一笑に付されたのだ。
さらにそれ以降、上司達は木本さんに向かって「女様」と陰口をたたき、木本さんが残業をしていると、信じられないような暴言を浴びせられるようにもなっている。「女様」という言葉は、匿名掲示板で女性批判をするときに使われる典型的なネットスラングだ。彼らは正当な批判をしているつもりかもしれないが、どうみてもミソジニーをこじらせただけの、見苦しい発言で「いじめ」をしているにすぎない。
「彼氏もいないから残業できるとか、女様に残業させると後から訴えられると、私に聞こえるように言ってくる。余りに悔しく、一人だけいる女性上司に相談したら”女ができることを率先してやって”と逆になだめられてしまいました。味方がいないと感じ、退職を考えています」(木本さん)
女性上司ですらこうなのだから、木本さんが会社に絶望するのも無理はないだろう。しかし、これも社会の現実だ。周囲を見渡せば、程度の違いはあれど、男尊女卑や性差別は「あって当然」と開き直ったり「本当はそう(男尊女卑で良いと)思っている」と打ち明ける人はゼロでは無い。
理由を聞けば「男と女は違うから仕方が無い」と返ってくるのがほとんどだが、何が違うのかと問うと明確には答えられない人ばかりだ。そもそも、男女だけではなく、人間は一人一人に違いがある。それを無視しているということになるので、他者への思いやりや平等という観念が欠如した、思考停止の状態だと言わざるを得ない。社会的に都合がよいからとSDGsのマークをかかげつつ、同じ職場の同僚には差別的な言動を隠さない。なぜ、その矛盾に気づかないのだろうか。
表の顔を裏の顔を使い分け、性差別を笑って容認する自身の姿勢はおぞましい。彼らの大半は、その悪質さの自覚がうすく、見つからなければ自分は今まで通りで何も問題ないと本気で考えている。外部から強く糾弾されたり、処分を受けない限り、世間もそこに差別があると気づいてくれないし、差別主義者たち自身も、その問題が見えてこないのかもしれない。