男性も更年期障害になる

 過去を振り返ると、反省点は多々あります。運動をしていなかったから四肢の筋肉の反射が鈍い。エアロビもサンバも2回で辞めました。40代後半からのヨガは20年、指導者にも恵まれ、楽しく続けて筋力もつきました。ある事情でそのヨガを辞めて早20年。関節が固まり、筋肉も衰えました。辞めなければよかったと後悔しきりの毎日です。

 私には80歳の壁はなかったけれど、「85歳の壁」がありました。

 2020年にコロナで“禁足令”が出て、10日ほどの夏休み明けの出勤時、いつものようにまともに歩けなかったのです。すぐに、サルコペニア(加齢による筋肉減少・筋力低下状態)だと気づきました。ヨロヨロと新宿駅構内を歩き、手すりにすがり付いてヨボヨボと階段を降りていく。この情けない行動が、コロナ禍が私にくだした「85歳の壁」ですね。

 私は閉経後の50代には重症の更年期障害に悩まされましたが、女性ホルモン補充療法で救われ、元気を取り戻しました。その経験から、30年前に更年期専門外来を立ち上げました。

 今ではその時期を乗り越えた女性たちが「80歳の壁」に立ちふさがれています。私は今度は彼女たちに男性ホルモンの力を借り、筋肉増強と気力を取り戻す医療に取り組んでいます。

 最近は、女性だけでなく男性の更年期障害も注目されています。男性は、まだ更年期障害という言葉に抵抗感があるかもしれませんが、医学的には、加齢により男性ホルモンが徐々に減少していくことで、女性の更年期障害と同様、さまざまな不定愁訴やうつ状態に襲われることが分かっています。

 男性ホルモンの減少は健康寿命にもかかわってくる大切な問題だと、改めて意識なさることをお勧めします。

※週刊ポスト2022年12月2日号

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