ロシア革命の指導者レーニンを凌ぐ恐怖政治を敷いた(Getty Images)
3人の独裁者を比較したとき、スターリンには根本的な違いがあると舛添氏は指摘する。
〈ムッソリーニやヒトラーと違い、スターリンは議会制民主主義という揺り籠で産まれたのではありません。それは、人類史上初の社会主義革命である1917年のロシア革命が世に送り出した独裁者なのです。ボリシェヴィキによる暴力革命を主導したのがレーニンで、法の支配などとは無縁で、自由を許さない一党独裁体制を樹立したのです。1924年の彼の死後、権力を継承したのがスターリンで、師であるレーニンを遙かに凌駕する恐怖による支配を確立しました。
「プロレタリアートの独裁」を唱え、共産主義を世界に喧伝するマルクスの考え方の基本が、民主主義の否定、暴力の肯定、独裁なのです。そのドグマを信じて、行動に移したのがレーニンやスターリンです。マルクスの著作を聖書のように敬い、共産主義という教義で世界を染めようというのが彼らの主張なのです。
その意味で、大衆民主主義が産んだ鬼子であるムッソリーニやヒトラーと、マルクス主義の嫡出子であるスターリンとは根本的に違っています。しかし、大衆を洗脳するためのプロパガンダ、政敵を弾圧するための秘密警察、見せしめの処刑、基本的人権の抑圧など、3人の独裁者には共通点が多々あります。この3人を比較することによって、20世紀の独裁の特色を明らかにすることができると思います〉(前掲書)
21世紀の現在、スターリンの独裁政治について改めて知る意義は大きい。舛添氏が指摘する。