結核症と診断されると薬での治療が始まりますが、大切なことは決められた薬をきちんと継続して服用することです。薬の不規則な服用や中断によって、薬の効かない多剤耐性結核菌が発生することがあり、患者本人だけでなく社会への脅威となっています。
結核医療費は公費負担制度が利用できますし、ほとんどが薬による治療です。とにかく早期に治療を始め、医師の指示を守って飲むことが肝要です。治療によって感染性がなくなれば、出社や登校も可能になります。
ワクチンは、乳幼児期のBCG接種が国の定期予防接種となっていますが、その効果は10~15年と限定的です。慢性的に続く咳は、咳喘息や百日咳もありますが、結核の可能性を頭に入れておきましょう。結核菌は何十年も体に居座るしつこい細菌で、“古くて新しい”感染症です。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
※週刊ポスト2022年12月16日号