「堂安は、あの本田圭佑(36才)と同様にビッグマウスで知られ、感情をあらわにする選手です。この堂安の態度を知った森保監督は、すぐに彼の所属チームがあるドイツまで飛び、2人っきりで話し合ったんです。こんな対応をしたのは過去を見ても、森保監督しかない。とにかく選手と1対1で会うことを大事にしている監督です」(前出・JFA関係者)
森保監督がかつて指揮を執ったサンフレッチェ広島を長年取材する、ライターの中野和也さんも述懐する。
「森保さんの選手とのコミュニケーションの取り方として特徴的なのは、とにかく話を聞くこと。選手に思いを吐き出してもらって、関係性を築いていくスタイルです」
プレーヤーとしての選手の人生を尊重する一幕もあった。スペイン戦、クロアチア戦での守備が光った冨安健洋(24才)は、2021年夏、イングランドの強豪アーセナルに移籍した。彼のステップアップは、森保監督の気遣いなくしてはなし得なかったといわれている。
「移籍のオファーがあったのは、2021年9月のアジア最終予選が開幕する直前で、森保監督は冨安選手の招集を見送る決断を下しました。移籍に集中できるよう、呼ばなかったといわれています。ただ、冨安選手を欠いた日本は格下のオマーンとの初戦で負けて批判にさらされた」(スポーツ紙記者)
アジア最終予選中には、キャプテンの吉田を呼び出し「この監督じゃダメだという思いが、もしみんなの中にあるなら、協会にぶつけてくれて全然構わない」と話したこともあったという森保監督。吉田はそんな指揮官を見て「本気で選手を思ってくれる」と感じたという。
「世間で監督の解任論が噴出したときも、選手たちは動じなかった。森保監督との関係性が築けていたからでしょう。むしろ結束は強まり、W杯出場を決めることができたのではないでしょうか」(前出・スポーツ紙記者)
26人対11人で戦っている
森保監督が選手を選考する基準の1つは、「自己犠牲の精神」だった。今大会はかつてないほどチームの雰囲気がよかったという。最終予選では中心メンバーとして活躍していたものの、本大会では出場機会のなかった柴崎岳(30才)が「ぼくはぼくとして、やっぱり自分が、チームにとってプラスだったりとか、自分にとってプラスのことをやりたいです」と笑顔で話したのは、その象徴といえるだろう。
「堂安選手はスペイン戦を終え、『ぼくたちは26人対11人で戦っている』と発言するほどでした」(前出・スポーツ紙記者)
前出の中野さんは、ドイツ戦、スペイン戦ともに前半で交代した久保建英(21才)の「自分の出来がいちばんよかった」という会見での強気の発言から、チームの雰囲気のよさを感じたと話す。
「このときの久保選手の表情を見ても笑顔でしたよね。ああいった発言をしても誰かがピリピリすることなく、次に向かっていけるチームなのだと思います」