夫・力道山の墓参りに訪れた敬子さん

アントニオ猪木の死を報告するために夫・力道山の墓参りに訪れた敬子さん

 小学5年生で「身長160㎝」超 

  敬子が小学校3年生のとき、一家は保土ヶ谷の広大な田畑を手放し根岸に引っ越している。勝五郎の通勤の問題もそうだが、勤続10年を数えたことも無関係ではないのかもしれない。 

  敬子の遊び場は野山から海に変わった。自宅の前には一面の太平洋が広がる。弟たちと浜辺に出ては、毎日あさりを取って食べた。 

  転校先の横浜市立間門小学校でも、敬子は学校に行くのが楽しみで仕方がなかった。毎朝5時に起きていち早く登校する。校門が開くのを今か今かと待った。5年生のときには跳び箱を八段も跳び、脚も異常に速く、バック転まで出来た。常人離れした運動神経に教師も目を見張った。 

  この時代の小学生に支給された脱脂粉乳も、まずいと思ったことは一度もなく、他人の分まで飲んだ。背丈がどんどん伸びて、小学5年生の時点で160cmを超えている。「女がこんなに大きくなっては……」と祖母が顔をしかめたが、それでも敬子は気にせず、毎日山のようにご飯を食べた。「何にせよ能天気でしたよ」と敬子は笑う。 

  田中家が根岸に来て3年ほど経ったある日のことである。隣家の歌舞伎の台本作家が、自宅を売って根岸から離れることになった。てっきり次も日本人が越して来るものと思っていたら、アメリカ人家庭がやって来た。 

 「外交官になりたい」 

  街中を闊歩する進駐軍の姿は、敬子もよく見かけてはいた。特に国際港の横浜はその機会も多い。だからと言って、隣人になろうとは夢にも思わなかった。勝五郎が「お隣はGI(陸軍将校)らしい」と言う。空襲の記憶も生々しく、敬子でさえも反米意識がないわけではなかったが、物珍しさが勝って一度遊びに行った。 

  家の中に入って驚いたのは、歌舞伎作家が住んでいたときと様変わりしていたことだ。卓袱台の代わりにテーブル、座布団の代わりに椅子が置かれ、襖も取り払われている。何より驚いたのが電化製品で、冷蔵庫、掃除機、洗濯機……と、当時の日本の家庭では見られないものばかり揃っていた。「私が本当の意味で戦後のカルチャーショックを受けたのは、お隣さんの家でした」と敬子は回想する。 

  そこから隣家に入り浸るようになる。志がも勝五郎も意外にも止めなかった。彼らは確かに厳しい人ではあったが、基本的には放任主義で「起こることはいずれも自己責任」というところがあった。 

  隣人はおしなべて敬子に親切で、何時間入り浸っても嫌な顔をしなかったし、美味しいものも食べさせてくれた。たどたどしくも日本語で話しかけてくれもした。 

  ただし、敬子と話すとき以外は英語だった。疎外感を感じたわけではなかったが、何を話しているのかはさすがに気になる。すると夫人はこう言った。 

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