当日、現場で、仁田忠常が最期を遂げることが決まり、演じきった
高岸さんが仁田忠常という人物を演じきっているからこそ、台本になくても「彼ならできる」という思いがスタッフたちの中にも芽生えたようだ。
「ひとりの人間を演じる上で、怒りも悲しみも喜びも、全ての感情を経験させて頂きました。初めてのお芝居ではあったのですが、この作品を通して演じることの楽しさに気づかせていただいたと思っています。
同時に俳優の凄さにも気づきました。主演の小栗旬さんなんか、あれだけセリフがあるのに、まわりにすごく気を使っていらっしゃる。僕にも『高岸くんのイメージに合うと思って』っておっしゃってオレンジ色のスニーカーとか小物入れをプレゼントしてくれるんです。
もちろん僕だけじゃなくて、出演者の皆さん全員にそういうふうに接していらっしゃるんです。現場はいつも活気があって、何と言うか、前向きな波動が漂っているんです。スタッフの全員がいいものを作ってやろうという勢いがある。そんな中で仁田忠常を演じることができて、とても充実した経験をすることができたと思っています。
自分がクランクアップする時には、皆さんに会えなくなるんだというのが悲しくて寂しくて。それでリハ(リハーサル)でちょっと涙が出ちゃったということもありました。そしたらまたその日の夜とかに、小栗さんが『なに泣いてんだよ』といった連絡をくださって。そういう心配りができること、これから僕もそういう人になりたいなって勉強になりました。
『鎌倉殿の13人』には、いろんなキャラクターの人物が登場します。どの人のどの人生が見てくれた人の心に刺さるかわからないけど、きっとこのドラマを見ることで明日も頑張ろうという気持ちになることができると思います。それを自分自身の活力に変えて、自分の目標、夢に向かって元気になってください。皆さんなら『やればできる!』」
聞き手・文/末並俊司
【プロフィール】
高岸宏行(たかぎし・ひろゆき)
1992年生まれ。強豪愛媛県済美高等学校の野球部出身。15年に高校の同級生だった前田裕太とお笑いコンビ「ティモンディ」結成。本作がドラマ初出演。
※次回は頼朝亡き後、宿老の13人の一員として二代将軍・源頼家を支えた三浦義澄役を演じた佐藤B作さんが登場します。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』 最終回「報いの時」
NHK総合ほか 12月18日(日)20時~
反目する北条義時(小栗旬)を討ち取るため、義時追討の宣旨を出し、兵を挙げた後鳥羽上皇(尾上松也)。これに対し、政子(小池栄子)の言葉で奮起し、徹底抗戦を選んだ幕府は、大江広元(栗原英雄)や三善康信(小林隆)の忠言を聞き入れて速やかに京へ派兵することを決断。泰時(坂口健太郎)、平盛綱(きづき)らが先発隊として向かい、時房(瀬戸康史)らが続く。