国際情報

【外交予測座談会】台湾侵攻より先に尖閣諸島の現状変更がなされる危険 日本に残された対抗手段は

尖閣諸島の問題も(時事通信フォト/沖縄県石垣市提供)

尖閣諸島の問題も(時事通信フォト/沖縄県石垣市提供)

 いまだ収束の糸口が見えないウクライナ戦争。それを好機とみるのが中国だ。台湾侵攻だけでなく、その“魔の手”は日本の目と鼻の先まで伸びてきている。安全保障研究者の小泉悠氏、ジャーナリストの峯村健司氏、国際政治学者の細谷雄一氏の3氏が、2023年に起こりうる中国による台湾侵攻と日本がすべきことについて語り合った。【全3回の第2回。第1回から読む

 * * *
小泉:日本は差し迫る台湾侵攻にどう備えるべきでしょうか。

細谷:平時のうちに台湾侵攻のシナリオを想定し、十分な対策を練る必要があります。具体的には、日本の基地が攻撃されても基地機能を維持・修復する能力を養い、弾薬などの備蓄、エネルギーの確保を進めることです。

峯村:台湾有事と聞くと、台湾海峡でドンパチして大変ですねと傍観するイメージでいるかもしれませんが、現実的には日本にミサイルが飛んできたり、中国大陸にいる邦人が次々に拘束され、日本企業が資産を接収されるといったことが起こり得ます。

小泉:台湾有事の際、中国が沖縄の米軍基地を叩くのは難しい。でも沖縄の沖合に弾道ミサイルを撃ち込み、「台湾に対する戦争協力をやめろ」と恫喝することはあり得る。

峯村:中国軍はアメリカとガチンコ勝負してもまだ敵わないと思っています。だからこそ台湾有事でいろいろな形で日本を揺さぶって日米関係に楔を打ち、「お前、使えねえなあ」とアメリカが日本から離れていく状況を作る。そしていつの間にか米中両国が何らかの合意を結んで、日本だけ貧乏くじを引かされることが最悪のシナリオと言えます。「兵ではなく馬を射る」が中国の伝統的な戦法であり、馬とは日本なんです。

細谷:私は台湾侵攻より先に、尖閣諸島の現状変更がなされることを危惧します。日本は尖閣に人工構築物を何も設けず、海上保安庁の巡視船が監視のため周回して、実効支配を確保しています。でも中国海警局が巨大な船で尖閣周辺を包囲し、実効支配を宣言したら、海保の船では太刀打ちできません。かといって海警相手に海上自衛隊が出動したら、日本による“戦争拡大”だとして国際的に非難されます。

小泉:確かに日中間の領土問題である尖閣を先にやられるとアメリカは介入しにくいですね。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン