国内

【薬剤師本音座談会】処方箋通りに調剤するしかない現実「医師が王様、薬局はコバンザメ」

保管法も重要だ

現役薬剤師が本音を語る(写真/GettyImages)

 薬剤師といえば、誰よりも薬のことを熟知する専門家。しかし、直接患者を診察する医師とは違い、彼らが薬について多くを語ることはほとんどない。薬剤師たちは日々、薬局の窓口に立って薬を処方しながら、どんなことを考えているのか。6剤以上の服用で副作用が出る薬ののみすぎが体を蝕むことはもはや常識であり、国を挙げて減薬に取り組む昨今だが、現場では「ねじれ現象」が起きているという。

【座談会に参加した現役薬剤師3人】
A子さん:大手薬局チェーンに勤める30代の薬剤師。
B夫さん:調剤薬局に勤める40代の薬剤師。
C美さん:個人薬局を経営する50代の薬剤師。

 * * *
B夫:うちの薬局でも政府による“減薬の推奨”を強く感じています。6種類以上の内用薬が処方された患者がいた場合、薬局が医師に対して薬を減らす提案をすれば点数が加算され、薬局は儲かる仕組みになっています。ただし現行の制度では患者1人に対して1回しか加算されません。定期的に薬局を利用してくれるなら、多剤併用によって生じる有害事象であるポリファーマシーに目をつむってたくさん薬を出した方が最終的に儲かる。

A子:非常によくわかります。薬局は医療機関ではあるけれど、コンビニと変わらない小売業でもあるから、たくさん薬が売れた方がお金になる。10種類の薬を処方されている人がいて、「この薬は危ないかも」「減らせる薬がありそう」と思っても、聞かれない限り何も言いません。明らかに処方が間違っている場合や、使用禁忌の場合は医師に確認しますが、薬剤師は医師が出した処方箋通りに調剤するしかないんです。

B夫:そうそう。悲しいけれど、医療業界では医師が王様で薬局はコバンザメ。医師の処方に対して薬剤師がごちゃごちゃ言ってもメリットはない。

C美:特にうちのような小さい薬局だと、在庫の薬が残ってしまうと大変。基本的に製薬会社から薬を買うときは、100錠や1000錠の箱単位で購入します。開封前なら返品できるけれど、1個でも売れたら返品できなくなるし、使用期限が切れたら捨てるしかありません。だから、いち薬剤師としては疑問を感じる睡眠薬や痛み止め、降圧剤なんかも、処方頻度が多くて在庫を抱えにくいから、薬局としてはありがたい。そんな薬を「やめた方がいいのでは……」なんてわざわざ言わないですね。

A子:使用期限の問題は非常に難しい。薬によって違いますが、ロキソプロフェンなど一般的によく使われるものは、2〜3年で切れるものが多い。薬局では古い在庫を抱えないように、古い薬から出していくのが暗黙のルールです。基本的に処方薬はすぐにのみ切ることを前提としているので、服用期間に使用期限が切れていなければ問題ない。つまり在庫を大量に抱えている薬局は、期限ギリギリのものを出すことだってある。

B夫:使用期限は1か月単位だから、「同じ月ならば期限切れじゃない」という理論でほとんど期限切れの薬を出している薬局もある。たとえば2月までが使用期限の薬を2月末に処方されれば、実際に服用するタイミングは3月にかかってしまう。いくら在庫がだぶついていても、うちでは絶対にやりませんが……。

※女性セブン2023年1月19・26日号

薬剤師が自分では飲まない薬

薬剤師が自分では飲まない薬

薬剤師が飲んでいる薬

薬剤師が飲んでいる薬

いい薬剤師、悪い薬剤師の見分け方

いい薬剤師、悪い薬剤師の見分け方

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン