ライフ

《火葬場の過酷な裏側》一級火葬技師が見た焼き場のリアル、焼却中の遺体はどうなっているのか【前編】

火葬場について教えてくれた下駄氏

火葬場について教えてくれた下駄氏(実際に働いていたころの写真)

 火葬場と聞くと、怖いし気味が悪いしで遠ざけたいような、詳しく知りたいような複雑な気持ちがするもの。『火葬場奇談 1万人の遺体を見送った男が語る焼き場の裏側』(竹書房)は、一級火葬技師として、そんな火葬場で実際に遺体を焼く仕事をしていた下駄華緒氏が、火葬場の過酷な裏側を明かしたホラーエッセイ。怖いもの見たさで恐る恐る手に取ったものの、読み進めるうちに、著者が遺族や遺体に、真摯に向き合っていた姿勢がひしひしと伝わり、背筋が伸びる一冊だ。【前後編の前編】

 * * *
 下駄氏はもともとミュージシャンで、20代はアルバイトをしながら自身でバンドを結成しベースギターを弾いたり、“事故物件すみます芸人”の松原タニシとバンド活動をしたりしていた。火葬場で働くようになったのは、30代に入ってからだ。

「きっかけは、めちゃくちゃパンクで怖かったバンドマンの先輩です。その先輩には『人を焼いたことがある』という噂がありました。気になってしかたがなくて、ある日、恐る恐る『マジすか?』と聞いたら『ある』と。火葬場の職員だったのです」

 その先輩が「今、火葬場の求人がある」と教えてくれたことと、当時、かわいがってくれた祖父が亡くなったばかりで、お世話になった火葬場の方がいい人だった記憶が強く残っていたため、火葬場で働こうかな、と思ったという。

 早速、面接を受けに行くと合格。初出勤した日に、いきなり火葬中の遺体を目視するよう指示された。覚悟はしていたが、やはり緊張した。確認用の窓を開いて覗いてみると……。

「最初はバーナーの火が強くて眩しくて、よくわかりませんでした。しばらく凝視していると、ご遺体が少し前屈みになって起き上がっているように見えました。しかも、目が合っているような……。『え!?』と驚くと同時に、人は火葬するとこんな風になるのか、祖父もこんなふうに火葬されたのか、と思いました」

 もちろんショックは受けた。目を背けず直視するだけでも、誰にでもできることではないだろう。遺体焼却に興味津々で「ぜひ見たい!」というタイプでもなかった下駄氏だが、祖父を亡くした経験が助けとなり、遺族へ思いをはせることができたからのようだ。

「目の前のご遺体は知らない人。ですが、この人との別れを悲しむ人たちがいる。この状態をご遺族に見せないために火葬場で働く人たちがいるのだ、と思ったら、自然と手を合わせていました」

 この初めて見た焼却中の遺体が、なぜ起き上がっているように見えたのかはわからない。しかし、人は火葬されると動くのが普通だという。まるで、スルメを焼いたときのように。

関連記事

トピックス

1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/五十嵐美弥)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン