江川悦子氏自身のダミーとの一枚(撮影/藤岡雅樹)
――そうして選んだ毛は、一発で決まるのでしょうか?
江川:いいと思ったけど、意外とよくなかったり……ということもたまにはあります。その時はまた違うものを探します。リアリティを追求してると「どうしてもそこは、これではちょっとダメ」となることが多いんですよ。それでも「まあ、いいか」という時も稀にありますが、それは本当に時間がない時ですね。「ペイントで色を少し加えたら何とかなるね」などと対応します。
それでも、毛にペイントを吹きつけると、毛のやわらかさが消えちゃうんです。といって、染色剤を変えてやっても色がつきすぎるとか。本当に微妙な色を出したい時は、いろいろ工夫しています。
歯ブラシみたいなものでそっとなでるだとか、エアブラシでふわっと吹くだとか、そのときどきで使い分けています。
【プロフィール】
江川悦子(えがわ・えつこ)/1954年生まれ、徳島県出身。出版社でファッション誌の編集をした後、夫の海外赴任に伴い退社。1980年、特殊メイクの学校Joe Blasco make-up Centerへ入学。『メタルストーム』『砂の惑星・デューン』『ゴーストバスターズ』などの映画にスタッフとして参加。帰国後、特殊メイク制作会社メイクアップディメンションズ設立。映画、ドラマ、CMの特殊メイクを多数担当。
【聞き手・文】
春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号