2011年に相撲協会の公益財団法人化に向けた改革案を答申した「ガバナンスの整備に関する独立委員会」で副座長を務めた慶応大学商学部の中島隆信教授はこう証言する。
「当時、大関経験者の親方に話を聞きましたが、『新たに部屋を興し、年寄株を手に入れるのに億単位の借金をして、返すのに精一杯』『後継者に売ったカネで老後の生活費を賄うしかない』と言っていた。株の売買を繰り返すことで成立する構造になっていて、改革はなされなかった。だから、豊ノ島のように株が手に入らずに退職を選ばざるを得ないケースが出てくるのです」
公益法人化の際に3年の猶予期間を設けたうえで借り株も禁止されたが、「それも表向きだけで借り株の親方は豊ノ島以外に何人もいる」(前出・若手親方)という状況だ。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2023年1月27日号