〈たしかに若者は上手に新しいテレビ視聴スタイルに慣れてきたかもしれない。しかし中高年は……。2時間ドラマは消滅し、紅白の演歌枠も激減。このまま追いやられるばかりなのか?〉
ぼくは去年、古希(70才)を迎えたんですけど、現代人はだいたい8掛けくらいだと思っているので、いま56才くらいの気持ちでいるんですね(笑い)。となると60才の人は48才の感覚。全然若いじゃないですか!『オレたちひょうきん族』とか『101回目のプロポーズ』を見ていた人が一緒に年を取っていると考えると、あえて中高年向けの番組を考えるのは違うんじゃないかと。いま現在もBS波では演歌番組や2時間サスペンス、時代劇などを放送しています。BS波で話題なら地上波に持ってくることも考えているので、柔軟に楽しんでいただけたらと思っています。
〈ずばり、再び強いフジを取り戻すための起死回生プランとは?〉
結局のところ、作る人がたった1人でも「面白い!」と思って夢中で作ったものでないと、視聴者は見てくれません。そんな甘い世界じゃありませんから。だからぼくの立場は、「作りたい!」っていう人を応援して、その環境を作ることなんです。入り口と出口だけは確認して、あとは軽く野放し(笑い)。野放しってすごく元気いっぱいかけまわるイメージがあるじゃないですか。若い人も失敗を恐れずどんどんチャレンジさせたい。ずっと失敗されたら困りますけど(笑い)、まあ、3回くらいはいいじゃないかって言っています。
というのは共同テレビに7年間いたとき、スタッフロールがぞろぞろ流れるようになって、どれだけ分業制になってるんだ?と思ったからなんです。分業制で面白いものなんてできませんよ。企画を出して編成(放送する番組の内容と品質に責任を持つ部署)がジャッジをするのはいいけれど、視聴率を気にして、こねくりまわしていると本当にやりたかった真意はどこかにいっちゃうんですよね。作り手って、のせられればすごい力を発揮するけど、いろいろ言われたら嫌になっちゃう。ぼく自身がそうだったから。
コンプライアンス問題も、作り手が番組と出演者とスタッフに愛情を持って作っていれば絶対変なことにはならないと思うんです。結局、大笑いできれば多少のことは気にならなくなったりもする。女性セブン読者のかたにも技術の進歩とともに歩むテレビを、これからも見ていってほしいと思います。
【プロフィール】
港浩一さん/フジテレビジョン代表取締役社長。1976年入社、数々の人気バラエティー番組を手がける。2015年から共同テレビの社長を務め、2022年6月から現職。
取材・文/辻本幸路
※女性セブン2023年2月9日号