ライフ

難聴、髄膜炎、精巣炎の合併症も 重症化しやすい「大人のおたふくかぜ」の恐怖

大人の「おたふくかぜ」にどんなリスクが?(イラスト/斉藤ヨーコ)

大人の「おたふくかぜ」にどんなリスクが?(イラスト/斉藤ヨーコ)

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、「おたふくかぜ」の恐ろしさについてお届けする。

 * * *
 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、ムンプスウイルスの感染によって起こります。

 耳下腺などの唾液腺が腫れ、痛みと発熱を伴う感染症です。耳下腺の腫れがお多福さんを連想させるのでしょうが、片側しか腫れない場合もあります。通常では1~2週間で治りますが、合併症として無菌性髄膜炎や難聴などの危険性のある怖い感染症です。

 実は子供のときに聴力を失う主要原因の1つがおたふくかぜです(約8割は片側のみ、2割は両側です)。私の友人の小児耳鼻咽喉科の医師はこの「ムンプス難聴」の小児を診断したときに、おたふくかぜの流行を知ると言っています。

 潜伏期間は12~25日で、感染した人の3割は症状を出さない不顕性感染です。髄膜炎、髄膜脳炎、難聴、精巣炎、卵巣炎、膵炎などの合併症があります。ワクチンを未接種で大人になってから罹った成人患者では入院を要する症例が比較的多く、小児より重症化しやすい傾向があります。30代半ばで初感染した男性は精巣炎となって痛くて歩くこともままならなかったとか、成人女性患者はあまりの痛みに盲腸炎と思って救急に行ったらムンプスによる卵巣炎であったといった話もあります。

 これらの合併症の中でも難聴は患者の500~1000人に1人は認められます。日本でも流行年には年間700~2300人がこの病気で難聴となっていると考えられています。ほとんどの場合は片側性の高度感音性難聴ですが、片側性難聴は小児では気づきにくく、遅れて診断されることが多いです。

 ムンプスウイルスは飛沫感染、接触感染でうつり、1人から二次感染させる平均的な数は4~7人と感染力の強い病気です。予防ワクチンはありますが、先進国で日本のみが任意接種で留まっています。1歳から任意接種で受けることができますが、日本では接種率が低く、4、5年周期で流行が起こっています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン