フィリピン・マニラ首都圏のパサイ市にある入国管理局「ビクタン収容所」入り口の検査場。賄賂を渡せば何でも通ると言われている(時事通信フォト)
その男は日本で関与した詐欺事件で盗み取った金の行方を心配し、幹部に相談する電話をかけてきたこともあるらしい。幹部は「事件や犯罪の話を電話でしても、収容所のヤツらは日本語がわからないから問題ないと言っていた」。事件に関する捜査状況がどうなっているかまで、収容所の部屋から電話で聞いてきたというのだから、ルフィと名乗る人物が収容所からスマホで、日本にいる実行犯らに指示を出していたという可能性はあるだろう。
金が物を言い、賄賂が横行するフィリピン
以前、話を聞いた暴力団関係者も、コロナ以前のフィリピンについて「あそこは収容所に限らず金が物を言う。警察でも賄賂が横行し、金さえ渡せばなんでもOK。金さえ払えば警察官もみんな友達。女の子に売春をさせようが、観光客相手に詐欺をしようがなかなか捕まらない。警察もグルだからな」と話していた。警察官と知り合いになるなら金さえ払えば簡単だが、彼らは平気で手を差し出してきたという。「ヤツらにとってはそれが当たり前。給料が安かったんだろう。金がもらえるとわかると、俺も俺もと寄ってくる」。
かなり昔だが、香港警察は汚職がまん延していると、香港に在住していた日本人から聞き、香港警察のベテラン警察官に話を聞いたことがあった。彼は「少し前までそうだったが、今は変わった」と真新しい制服に身を包んで、にこやかに話してくれた。
「前は給料が安いし社会的地位も低かった。犯罪は多く、警察官は休む暇がないほど忙しい。なのに生活は苦しいままだ。だから警察官は賄賂をもらって、犯罪が起きても見ないフリをする。汚職が当たり前のようにまん延していたんだ。香港警察はこれではダメだと改革に乗り出し、警察官が賄賂をもらわなくても十分な生活できるよう給料を上げた」
暴力団関係者はこの時、「フィリピンの警察は100年経っても変わらない」と苦笑いしていた。ビクタン収容所に収容されている容疑者たちの生活ぶりを報じるニュースを見ていると、確かに彼の言う通りかもしれない。