批判続出の「家系図」(公式サイトより。現在は削除)
あっという間に削除してしまえば、ますます世襲アピールだったのかと捉えられる気がする。岸田文雄首相(65才)の首相秘書官になった長男・翔太郎氏(32才)が同行した首相の外遊先での観光疑惑が騒がれたばかりで、世間では政治家の世襲や身内びいきや親の七光りに逆風が吹いている。信千世氏はフジテレビの社会部記者という経験を生かし、議員の世襲について、世間の感覚や意識がどうなのかリサーチしなかったのだろうか。
おもしろい研究結果が、RIETIと呼ばれる独立行政法人経済産業研究所の2022年度のノンテクニカルサマリーに出ている。タイトルは「世襲政治に対する日本人有権者の認識と評価」、ファカルティフェローの尾野嘉邦氏をプロジェクトリーダーとする「先端技術と民主主義:技術の進展と人間社会の共生を目指して」という研究プロジェクトの一環だ。
研究によると、日本は民主主義国家の中で、4番目に世襲政治家が多い国らしい。有権者に世襲政治家に対するイメージ調査では、性格特徴や政策領域に対するストレオタイプについて、有権者はポジティブな印象だけでなくネガティブな印象も抱いているという。世襲政治家は非世襲政治家より、高学歴で裕福で政治経験が豊富、政財界に幅広いネットワークがあるが、誠実さや能力、信頼感や決断力の点では低くみられているのだ。
さらに面白いのは、世襲政治家が選挙においてどう評価されるのか、衆議院議員としてどの程度望ましいのかに関する研究結果だ。これによると、親に政治経験が何もなかった場合より、親が元大臣、元国会議員、元地方政治家であった場合のほうが、衆議院議員としての望ましさのスコアは下がる傾向が示されている。特に親が元大臣であった場合は、ネガティブな評価が下される傾向が強かったのだ。サマリーではこれらの結果から、世襲は政治家に対する好感度を下げる結果につながるとまとめられている。
親の七光りがネガティブになるなら、信千世氏の場合、マイナス7光り×6名=マイナス42光り。家系をアピールするほど印象は悪くなりやすい。選挙では候補者の印象や好感度が結果を左右する。信千世氏がこのサマリーを目にしていたら、自身のプロフィールは違うものになっていただろう。
さて掲載されていたこの家系図、居並ぶ大物政治家より信千世氏の名前のほうが太字で大文字になっていた。立候補するのは自分だから当然なのだが、せめて政治経験の浅い自身の名前を一番小さく小さく載せていたら、家系図掲載も彼に対する印象も、もう少し違ったものになったような気もしないではない。
現在、HPからは「家系図」が削除されている
朝鮮人民軍創建75周年慶祝閲兵式を観覧する金正恩朝鮮労働党総書記(中央左)と娘(中央右)(朝鮮通信=時事)