(c)NTV

『リバーサルオーケストラ』より。天才指揮者役の田中圭と門脇麦(c)NTV

「このまま、運に任せてやろう」

──現場では他の演者さんとどんなコミュニケーションを取られているのでしょうか。

岡部:門脇さんや田中さんにも「慣れました」と言えるようになったのはつい最近(取材は2月上旬)なんですよ。

──「ちょっとご飯いきましょう」みたいな。

岡部:それはないですけど(笑)。最初はね、田中さんと距離があったんですよ。でも彼とは役柄上、共演するシーンが多くて「なんかしゃべらなあかん」と思って「今日、天気がいいですねえ」「田中さん、散髪はどこに行かれます?」とか、無理に話題を作っていました。本当はそんな話を聞きたいわけじゃないんですけど。最初は僕にも(小野田の)“ノリ”がなかった。役さえ掴めていないのに、会話も弾むわけがない。でも最近は何も話さなくても一緒にいられるな、と思えるようになりました。

──お話を伺っていると、岡部さん、ベテランでいらっしゃるのに不安を抱えながら現場に入っていくタイプですか?

岡部:もう(現場は)たいがい不安ですね。違う作品なんですけど、阿部寛さんと共演したことがあって。事前に僕と10歳違いで、同じ誕生日だっていうことを知っていたんです。そのことを阿部さんにお話したいと思ったんですけど、言えない。なぜなら僕が緊張していたし、うまく芝居ができなかったらみっともないと思ってしまうから。ちゃんと芝居が成功してから初めて話せるんです。

(撮影/横田紋子)

「格好をつけて、賢そうなことを言わんようにしておこうとだけは決めてきた」(撮影/横田紋子)

──不安というよりは、すごく誠実なのでは? という印象を持ちます。

岡部:それならいいんですけど。今日もね、僕、取材を受けるのがめちゃくちゃ緊張していたんですよ。でも格好をつけて、賢そうなことを言わんようにしておこうとだけは決めてきたんです。僕、A型ですし、不安がりなところはずっと変わらないと思うんです。でも芝居に関しては、今、ノレている、やれている、面白く感じていることを続けていければいいと思っています。

 40代になる前に「人気者になることをあきらめよう」と考えたところで舞い込んできた、去年から続く運ですしね。この考えにたどり着くまでの人生、ずっと他力本願だったんですよ。自分の人生なのに“決定”をしてこなかった。それが生まれて初めて“決定”をしたら、葛西、村井、小野田役が巡ってきた。ならこのまま、運に任せてやろうと思っています。

──では最後に。『リバーサルオーケストラ』の小野田役は最終回に向けて、大活躍はあるのでしょうか?

岡部:(ニヤニヤしながら)あの……ハープを投げ飛ばしたりとか? ティンパニを「ヤーッ!!」と怒鳴りながら、壊したりとか? あるかもしれませんねえ。

 * * *
 岡部さんは現場入りを不安と語り、今回の取材も緊張していたという。確かに取材開始直後は、ボソボソ……とした口調だったかもしれない。ただこの取材終了後、「緊張されていたなら、ビールでも用意しとけば良かったですね」と言うと、「そうなんですよ! 居酒屋やったら、もっと饒舌に喋れたかもしれません。あと2時間くらいで今日の撮影終わるんで、待っていてもらって、行きましょか?(笑)」と岡部さん。次回の取材はアルコールを忘れずに持参します。

【了。第1回から読む】

(撮影/横田紋子)

今後の活躍から目が離せない(撮影/横田紋子)

【プロフィール】
岡部たかし(おかべ・たかし)/1972年6月22日生まれ。和歌山県出身。俳優を志して上京後、劇団東京乾電池に所属。その後劇団を退団、数多くのドラマ、映画、舞台に出演を続けている。2022年出演の『エルピス』(関西テレビ、フジテレビ系列)、『あなたのブツがここに』(NHK大阪)での一癖のある役で注目される。自身が立ち上げた演劇ユニット『切実』では演出も担当。

(c)NTV

『リバーサルオーケストラ』より。谷岡初音の妹(恒松祐里)と楽団を見守る小野田役の岡部たかし(c)NTV

(c)NTV

『リバーサルオーケストラ』より。元天才ヴァイオリニストを演じる門脇麦(c)NTV

(c)NTV

『リバーサルオーケストラ』より。オケの再生を託された世界的指揮者・常葉朝陽を演じる田中圭(c)NTV

◆取材・文/小林久乃

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン