小川さんは旧統一教会信者でない夫(写真右)と結婚した
聖酒は、それを飲むと教祖が認めた血統に転換されるとされているものです。教会には伝道相手に対してのチェックシートのようなものがあり、聖酒を飲ませたか、祝福結婚を受けさせたか、という項目があるのを見たことがあります。サタン世界に生まれた夫に聖酒を飲ませることで、父は夫の血を転換しようとしたわけです。
事前に説明もないまま、何も知らない夫に、そのような酒を飲ませようとしたことで、私は怒りに震えました。それを飲んでほしいのであれば、「これを飲むと血統が転換される。これは教会のワインなんだ」と夫に説明した上で、合意をとって飲ませるべきです。でも、父は「出会えた証に乾杯しよう」とごまかして、聖酒を飲ませようとしました。そのような態度が私には許せませんでした。
「それって教会のお酒だよね、何で説明もしないで飲ませようとするの?」
私がそう言うと、「そんなつもりはない」「勘違いしているんじゃないか」と、父はしらばっくれていました。
「あなたたちの神様が、そんなことをして本当に喜ぶと思っているの? そうやって嘘をつくから全部うまくいかなくなるんだ。そういうところがあり得ない」
私は泣き出して、ひとりで1階の台所から2階の部屋に上っていきました。
その後も夫と両親はしばらく話していました。夫は「自分はこれを飲んだからといって、騙(だま)されたとも思わないし、血が転換されるとも思わないから別に飲んでもいい。でも、彼女が同意しないまま、飲むことはできません」と言ってくれました。
母は黙っていましたが、廊下ですれ違う際「子どもができたらどうするの?」などと聞かれました。母は祝福2世の私がサタン世界の人と結婚するということに、納得していなかったと思います。
自らの半生を綴った手記『小川さゆり、宗教2世』も3月7日に刊行