(c)谷口菜津子・新潮社/「今夜すきやきだよ」製作委員会

どんな結末が待っているのか。第10話より (c)谷口菜津子・新潮社/「今夜すきやきだよ」製作委員会

「びっくりするような最終回かもしれません」

 実は原作漫画では、「ともこ」がアロマンティックであると明言されてはいない。本間Pが読後に持った感想を、ドラマの要素として取り入れることになったという。

「原作では“恋愛に興味がない”と描かれていて、セクシュアリティへの言及はありません。でも読んだ時に『もしかしてともこちゃんはアロマンティックなのかな?』と思いました。そして生身の人間が演じる映像であれば、よりその感覚は際立つのではないかと感じたんですね。それならドラマはアロマンティックとして描こうと。原作者の谷口菜津子さんに相談をして、アロマンティック監修の方にも参加してもらって、制作となりました」

 これまでにも日本国内では性的マイノリティであるLGBTQを題材にした作品が多く制作されている。中でも近年は、そもそも恋愛感情を抱かないアロマンティックや、性的欲求を覚えないアセクシャルを取り上げる作品が増えてきた。例えば『恋せぬふたり』(NHK総合・2021年)、映画『そばかす』(監督:玉田真也・2022年)もそうだ。その中でも『すきやき』は至極ナチュラルに、特にインパクトを持たせることはなく“アロマンティック”が物語に溶け込んでいる。

「それはすでにともこちゃんが、“アロマンティック”と自認している状態で物語が進んでいくことが大きいかもしれません。セクシュアリティにフォーカスが当たるエピソードもありますが、アイデンティティの一部として描くようなアプローチで作品を作っていこうと思っていました」

 原作漫画は単行本1巻で完結しているが、ドラマではエピソードを膨らまし、全12回の放送が予定されているそうだ。

「漫画が全1巻しかないぶん、ドラマのオリジナル部分にも力を入れています。例えば第5話。原作であいこが『なんで同業者なのに仕事の話ができないんだろう』と漏らす1コマがあるんです。私もあいこちゃんと同じように『なんでだ?』と感じて、ゆきのパーソナリティからその理由を色々と考えました。そこで、その一言に付随するようなエピソードを作り、脚本に入れました。だから全くのオリジナルではなく、原作を深堀りしながらエッセンスを加えていく感じでしょうか」

キャプション

「最終回はびっくりするようなことがあるかもしれません(笑)」

 穏やかで静寂そうな本間Pの、実はふつふつとした熱量がこもる『すきやき』。名プロデューサーであり、ドラマが大好きで仕方ない女性が計算し尽くして導き出す世界だからこそ、面白いんだ。彼女の話を聞き、当初に浮かんだ「なぜこの作品はいろいろな要素が詰まっているのに面白いのだろう?」という贅沢な悩みが解決した。

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