2月28日、米大リーグ・オープン戦で投げるエンゼルスの大谷翔平。3月1日夜に帰国して侍ジャパンに合流した(Sipa USA/時事通信フォト)
宮崎の強化合宿が始まると大勢のファンが押し寄せ、プロ野球の各チームと日本代表の強化試合は大いに沸き、侍ジャパンのグッズ販売コーナーは入場待ちに数時間という盛況ぶり。特に大谷翔平選手(28才、エンゼルス)が日本に帰国しチームに合流、強化試合に出場し始めてからは、メディアでも報道合戦が始まったのかと思うほど、スポーツ紙の一面は大谷選手一色。情報番組もトップニュースに大谷選手の活躍が報じられていたほどだ。野球に興味がなかった人たちの中には、この異次元の熱狂ぶりに、にわかファンになった人もいるだろう。
今年の侍ジャパンは「史上最強」「ドリームチーム」の呼び声が高く、選手層が厚くスター選手が多い。二刀流の大谷選手は言うまでもなく、最年長の日本代表となるパドレスのダルビッシュ有選手(36才)、2022年に史上最年少で三冠王を達成し、村神様と呼ばれる村上宗隆選手(23才、ヤクルト)に史上最年少で完全試合を達成した令和の怪物、ロッテの佐々木朗希選手(21才)と、その活躍が期待される選手ばかりだ。
史上最強と呼ばれる侍ジャパンだけに、日本中の期待は高まる一方だが、すさまじいプレッシャーの中で誰もが常に完璧なパフォーマンスを行えるわけではない。試合が始まってしまえば、そのすべてが人目にさらさらされ、逃げも隠れもできない。期待が大きければ、落胆も大きくなる。落胆させられたと感じれば、感情の矛先を選手に向ける者も出てくる。
日本中が熱狂した昨年のFIFAワールドカップ・カタール大会、決勝トーナメントへの出場をかけた1次リーグ、勝つと思われていたコスタリカ戦で、日本代表は敗戦。サッカー元日本代表の本田圭佑氏(36才)はこの時「ABEMA」で、「この状況に勝手に僕らが期待して勝手にガッカリしているだけ」と解説したが、その通りだ。
書いているうちに、ふと思った。件の政治家らにまるでガッカリしないのは、まったく期待していないからだ。世間がこの話題よりWBCに夢中になるのも、国民が日本の政治や政治家に期待していないからだろうか。