現在は水道橋の「闘魂SHOP」で働く敬子さん
「私は水泳も得意」と少し高を括っていた敬子も必死だった。想像以上に体力が要るのだ。中には泳げず浮いているだけの新人もいた。カナヅチがバレたら落第は必至で、地上勤務に回される蓋然性は低くない。「どうするのだろう」と敬子がその光景を眺めていると、彼女はどうにか泳いでいるように偽装した。
研修は体育を除いて、20名ほどの男性の合格者も一緒だった。彼らも3か月後には「スチュワード」となり「パーサー」と呼ばれる機上の人となる。
その中に風変わりな男が一人いたのだが、まだ敬子の眼中にはなかった。
(文中敬称略。以下次回、毎週金曜日配信予定)