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高田文夫氏 おやじ世代のゴールデンタイム「BSの火曜夜10時台」の魅力を語る

「BSの火曜夜10時台」の魅力とは?(イラスト/佐野文二郎)

「BSの火曜夜10時台」の魅力とは?(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は“おやじ世代のゴールデンタイム”について綴る。

 * * *
「ゴールデンタイム」などと言って、テレビ番組の編成では一喜一憂したものだが、今の時代、ゴールデンの視聴率はどうなのだろう。

 私にとって(いや、おやじ世代にとってだ)今やゴールデンは火曜の夜10時台のBSなのだ。古い町を行くと昭和おやじのパラダイスがそこにある。見たいものが10時丁度にスタートして3本がかぶるのだ。火曜夜はカチャカチャッ、リモコンをやって親指が痛くなる。

 BS-TBSでは玉袋筋太郎の『町中華で飲ろうぜ』。この番組をきっかけに「町中華ブーム」が起きた。新宿で生まれ育った玉ちゃんは「スナックブーム」も仕掛け、町の子の面目躍如。江戸っ子の大先輩、毒蝮三太夫からもらった派手で趣味の少し悪いジャンパーをひっかけ下町を行く姿は、東京っ子としての誇りでもある。ビールの大びんを注文すると必ず「633は大人の義務教育」と言ってゴクリうまそうに飲み干す。633とはビール大びんの633 のこと。

 師匠ビートたけしの地元足立区へ行けば、昼から飲んでいるたけしの小学校の同級生と遭遇したり、二代目、三代目の大将の苦労話をきいてジーンとしたりなかなかの人情噺も入ってきて見ているこちらの酒もすすんでしまう。番組後半は可愛い顔した高田秋、坂ノ上茜がレバニラのにおいを頼りに東京を行く。

 BS朝日では『バナナマン日村が歩く! ウォーキングのひむ太郎』。大手町やら恵比寿やら、主に今のところ山の手をウォーキング。趣味がウォーキングらしく、あんな顔して東京の町を本当によく知っている。ゴールはカミさんには内緒でそば屋へ入って食べる姿が嬉しそう。こっちまで「ごほうびごほうび」と叫んでしまう。

 同じ時間にこの2本を見るだけでも大変なのにそこへBSフジで『梶原善のビルぶら!レトロ探訪』が始まったからたまらない。ホラ昨年の『鎌倉殿の13人』で怖い殺し屋みたいな役を演じた役者ですよ。芸人達は「すいません、ちょっとカメラいいですか」と下から皆な行くのに梶原は一方的に「カメラいいよネ! ここ古いの? 何年!?」と横柄なのが妙におかしい。通称おやじビルを訪ね一軒一軒ぶっきら棒に紹介していく。「ニュー新橋ビル」「東京交通会館」「池袋ロサ会館」なんて回はたまらなかったネ。

 そうこうしてたら4月から火野正平が自転車で巡るNHK BSプレミアム『にっぽん縦断こころ旅』の新作がまた始まる。会ったら「34年やってるラジオ、高田さんがやめない限りオレも自転車やめないから」だと。

※週刊ポスト2023年3月24日号

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