ロボットに感情はないし創造的な答えはない

 ロボットの回答機能は簡単だ。ネットの中に散らばった映画サイトの膨大なデータから答えになりそうな文脈を引っぱり出し、ロボットの好き嫌いではなく繋ぎ合わせて答えただけで、それこそ、“捏造”された文も引っぱり出すと間違った答えも出るし、また質問を変えるしかない。身のない国会答弁みたいなものだ。

 結局、適切な正しい答えかどうかは使用者の判断ひとつだ。だから、まだまだ足手まといなアシスタントでしかないし、妄信は禁物だ。

 デタラメな答えを出されたらどうにもならない。陰謀論で上がっている「デマ」のデータや、「適当なウソ」も拡ってしまうだろう。「ChatGPT」という相談室は、物理や自然摂理の正解が元からひとつしかないものは即答してくれるだろうが、ロボットに感情はないし、独自の創造的な答えはないのだ。

 批評家でも研究家でもない、映画ライターと称する人が大勢いるが、もしも、新作の試写を見逃して原稿の締め切りに焦っている時、Chatロボットに手を貸してもらえば、映画の感想文などあっという間に仕上げてくれそうだ。

 ここはライターのプライドにかけてもロボットは使いたくないところだが、先に、映画宣伝マンがロボットに「この作品の良さを教えて」、「客を呼び寄せる記事を書いて」と訊ねると、ライター君には仕事が回ってこなくなってしまうかもだ。

 ネットのアルゴリズムで上げられる情報ばかり当てにしてると、人間の感情はますます劣化してしまうし、学校に通う10代の子供がそれを使い出したら、「それは違う」と 生の言葉で語る力も言葉も失くしてしまうだろう。ちょっと厄介なロボットの出現だ。

◆文責・井筒和幸
1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校時中から映画製作を始める。1975年にピンク映画で監督デビューし、『岸和田少年愚連隊』(1996年)と『パッチギ!』(2004年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。その後も 『黄金を抱いて翔べ』(2012年)、『無頼』(2020年)など、さまざまな社会派エンターテインメント作品を作り続けている。コラムニスト、鳥越アズーリFMでも日曜13時からの放談番組に出演中。

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