最近はとにかく枚数をたくさん撮って対応する(イメージ)
生徒ごとの掲載数と種類のチェック表を作成
カメラマンがこれだけ苦労しているのだから、教員も「卒業アルバム」制作に当たっては、以前にも増して振り回され続けている。都内の私立小学校教諭・橋本成美さん(仮名・40代)が、その苦労を訴える。
「自分の子供の写りが良くない、登場回数が少ない等といったクレームは昔から一部の親から上がっていました。最近は、その数が増えてきたように思いますし、親だけでなく子供たち自身もより気にしているように思います。アルバムってお金を出して購入する商品で、一生残るわけですから、そうした声を無視するわけにもいかないんです」(橋本さん)
アルバムの制作は、学年主任や担任などで構成する「アルバム委員会メンバー」が中心となって行われることが多い。メンバーは写っている写真が何回、登場しているか、その大きさ、シチュエーションなどを生徒別にまとめ、偏りが出ないよう調整まで行うのだというが、それは以前赴任したどの学校でも同様だったという。
「ある試合の写真を掲載したところ、その試合で活躍したのは別の生徒なのだから、そちらの写真を載せるべきだ、というクレームが親から届いたこともありました。そのときは、カメラマンに”この生徒の写真を撮っていないか”と確認して、写真を差し替えました。すると今度は、差し替えられて掲載されなくなったほうの生徒の親からクレームが来る。なので、客観的に見てもバランスが取れていることを示すためにデータにまとめるんです。委員会のメンバーだけでなく、教員全員で数日かけてこの作業をやりますから、大変な手間です」(橋本さん)
事前に「親に確認」していること自体、違和感を覚えるのは筆者だけではないだろう。だが”現場運営”をスムーズにするため、クレームの発生しそうな親には、担任が個人的に連絡し念押しすることも珍しくないのだとも明かす。
そしてこの手のクレームが年を追うごとに多様化していると説明するのは、大阪市内の公立小学校教頭・長谷川仁美さん(仮名・50代)だ。
「そもそも卒業アルバムにうちの子を出すな、という親もいます。実際、ある卒業生がアルバムのクラス集合写真をSNSに載せて、無断で写真を使われたとトラブルになったことがあります。アルバムへの掲載差し止めを要求してくるのはほとんどの場合親で、基本的には親を説得する場合が多いのですが、家庭での影響からなのか生徒まで拒否する例もあり、かろうじて名前の文字のみ載せたということもありました。最近だと、カメラマンの写真は写りが悪いからと、自分で撮影した顔写真を持ってくる生徒までいる始末。価値観の違いと言えばそうですが、将来、アルバムを見たときに悔やんでも取り返しがつかないのにと思います」(長谷川さん)
生徒や親という「顧客」に対するサービスであるため、一般的にはこうだとか、普通はこうするといった現実的なアドバイスもするが、基本的には客の要望を受け入れるしかなく、これはカメラマンにも教員にとっても、同様のようだ。これを「客のニーズ」といってしまえばそれまでだが、ニーズに応えすぎたがあまり、とんでもない卒業アルバムが仕上がってしまった例もあると続ける。