2022年10月6日、ガーシー誕生会で。左から2人目が元バンドマンの秘書の墨谷俊氏、中央がガーシーこと東谷義和氏、右から2人目がFC2創業者の高橋理洋氏(伊藤喜之氏撮影)
そこで出会ったのが自らの詐欺疑惑が発覚して、どん底の状況にあった東谷だった。2人とも共通の人物、黒幕Aによってドバイに呼び寄せられていた。
ちなみに与沢と久積はかつてネオヒルズ族として同じ釜の飯を食った仲だが、今は関係が悪化し疎遠になっている。同じドバイに滞在していても、私が知る限り、直接的に接触した形跡はない。昨年7月、久積は与沢を糾弾する動画をYouTubeにあげ、一部で話題になった。暗号資産NXDやツイッターでのお金配り企画などで知られる投資家の瀧澤龍哉もドバイ在住だが、SNS上などで久積が「BADGEコインの上場を邪魔された」などと指摘し、トラブルになっている。ドバイを舞台にして、こうした暗号資産関連の日本人同士のいさかいも起きているのが現実だった。
そうした状況はUAEアブダビにある日本大使館やドバイにある日本総領事館も憂慮しているようだ。3月20日付の総領事館からの注意喚起メールには、こんな一文があった。
「不動産や仮想通貨等の投資案件に起因する日本人同士のトラブルも散見されていますのでご注意ください」
外務省関係者によると、UAE国内で何らかの詐欺的な行為などが報告されている件も含めて、大使館並びに総領事館が調査対象としている要注意の日本人リストは80人前後にのぼり、ここ数年で急増しているという。
官邸を攻撃対象に
一方で、UAEに引きつけられるグレーゾーンの人々は日本人に限らない。とりわけ有名なのは世界中からの政治亡命者の多さだ。
最近では、アフガニスタンのガニ前大統領、スペイン国王だったフアン・カルロス1世、タイのタクシン元首相、インラック元首相の兄妹もアブダビやドバイで事実上の亡命生活を続けているとされる。みな母国に戻れば、過去の汚職などで刑事訴追を受ける可能性があると取り沙汰されている。こうした亡命者は、小国の元首脳や国会議員レベルも含めれば数えきれないほどいる。
経済人も多い。ロシア発のメッセージアプリ・テレグラム創業者で「ロシアのマーク・ザッカーバーグ」の異名を持つパベル・ドゥロフ氏もプーチン政権と距離を置いたとされ、拠点をドバイに移している。ロシアのウクライナ侵攻後には経済規制逃れで欧州に持っていたスーパーヨットなどの資産をUAEに移動させたり、ドバイの高級レジデンスを購入したりしているロシア人富豪(オリガルヒ)も複数いると報道されている。
UAEがなぜ選ばれるのか。この国であれば欧米と遜色ない先進国の暮らしが享受できるという側面のほか、米国、中国、ロシアといった大国とそれぞれ良好な関係を持つ全方位外交を基本にしており、国際政治で中立的な立ち位置を確立していることが大きい。2020年夏にはトランプ米政権の仲介で長らく敵対していたイスラエルと電撃的に国交を開くなど、経済実利を優先するお国柄でもある。