「寛容」を国是とし、寛容担当大臣という大臣職もつくっている。全世界の約200の国籍の人々が暮らすとされ、外国人を受け入れることが国家の生存戦略の「1丁目1番地」であり、それが外国人に対してオープンであり続ける理由だ。
東谷は最近、警察捜査を「国策捜査」などと指摘し、その不当性を主張し始めている。常習的脅迫や名誉毀損の疑いがあるとされている人気俳優らへの暴露行為はあくまでも事実に基づいた告発であり、そうした容疑には当たらないと訴える一方で、東谷は岸田内閣のキーマンである木原誠二官房副長官を攻撃対象とするなど、政権中枢にも刃を向けてきたため、東谷への捜査は「官邸了解案件」であると囁かれている。
すでに除名されたとはいえ元国会議員でもあり、確かに官邸の関与は十分ありうる話だろう。前述したようにUAEはそうした母国では政治的な迫害を受ける恐れがある者を保護する可能性があり、今後の展開次第では、東谷が政治亡命者として保護下に置かれるウルトラCのシナリオもありうると考えている。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
伊藤喜之(いとう・よしゆき)/1984年、東京都中野区生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、2008年に朝日新聞社に入社。松山総局(愛媛)を振り出しに、東日本大震災後には南三陸(宮城)駐在。大阪社会部では、暴力団事件担当として指定暴力団山口組の分裂抗争などを取材する。その後、英国留学を経て2020年からドバイ支局長。2022年8月末で退職し、同9月からドバイ在住の作家として活動している。
※週刊ポスト2023年4月7・14日号