徳島・池田高校で捕手としてプレーする關口赤彗星くん
甲子園で『シャアが来る』を奏でてほしい
唯さんは毎週末、妻と一緒に兵庫から車を運転して徳島に行き、池田高校の練習試合にもほとんど足を運ぶ。自宅から池田までは高速を使って2時間半の距離だが、高速代を節約するため下道を利用し、4時間半をかけて向かうという。
いま、關口家にとって大きな希望が、長男・赤彗星くんだ。新2年生ながら徳島の古豪・池田高校の主力として期待される、強肩・強打の捕手だ。その名前のインパクトもあって、県内では注目の選手となっている。赤彗星くんが話す。
「僕も赤彗星という名前が嫌だと思ったことは一度もないですし、ガンダムのキャラクターからとった名前を恥ずかしいと思ったこともない。部内でも、『シャア』と呼ばれています」
1974年春に名将・蔦文也監督(故人)がわずか11人の“さわやかイレブン”を率いて準優勝を果たし、1982年夏と1983年春の夏春連覇を含む、計3度の甲子園制覇を誇る池田高校も、夏は1992年、春は2014年を最後に聖地にたどり着けていない。
赤彗星くんには夢がある。もし、甲子園に出場できたならば、池田高校のアルプス席で奏でてもらいたい曲があるのだ。それは『機動戦士ガンダム』の劇中歌である『シャアが来る』――。
「『シャア、シャア、シャア』と連呼するあの曲で打席に入って、甲子園全体が僕の名前を呼んでくれたら、これほど最高なことはないと思います。ただそのためにはもっと自分が成長しないといけない。自分のセールスポイントは、芯を食えばスタンドに運ぶことができるパワーですね。捕手としてはワンバウンドのブロッキングに自信がある。課題はというと、二塁送球などのコントロールとバッティングにおけるミート率ですね。絶対に残りのチャンスで甲子園に出場し、勝利して池田高校の校歌を歌いたい」(赤彗星くん)
アニメ『機動戦士ガンダム』でシャア・アズナブルの声を務める声優は池田秀一さんである。思わぬ“池田つながり”にも、赤彗星くんは不思議な縁を感じている。
既に長女と次女が成人を迎え、再来年3月には長男の赤彗星くんも高校卒業となる。唯さんは言う。
「今後もし誰かが『改名したい』と言いだすようなことがあれば、それは子供の権利ですから、私がとやかく言うことはない。だけど、みんな気に入ってくれていますから、そんなことを言い出す子はおらんのとちゃうかな」
名前という最も個人的なものをどう受け止めるかは、当然ながら人それぞれなのだろう。今の關口家は、甲子園の夢を全員が共有しているように見えた。
(了。前編から読む)