松本零士先生の自宅を取材で訪れたタケカワさん
「映画のプロデューサーからの要望は『とにかく999(スリーナイン)が空へ飛び立つイメージで』という一点でした。僕も『銀河鉄道999』の漫画は読んでいましたので、それは理解していました。依頼を受けてから、作詞家の奈良橋陽子さんからの歌詞がなかなか私の手元に届かなくて、僕がプロデューサーに“『銀河鉄道999』の企画はもうなくなったんですか?”と尋ねたら、その場で鞄から歌詞を取り出して『今できて持ってきた』と。それで『これはいつまでに作るんですか?』と聞いたら『明日のお昼12時からレコーディングなんだけど、平気か?』って(笑)」
レコーディングのスケジュールは決まっていたが、歌詞がタケカワさんに手に渡ったのは収録12時間前の深夜0時。歌詞を持って急いでタクシーで家に向かったという。譜面を書きながら当時の緊迫した制作秘話を語った。
「僕は英語の歌詞を見ると、そのまま頭の中で歌になるタイプで、曲を作るのは早いほうでした。ただ同時に納得できない曲もできてしまうこともあり、12時間という限られた時間を考えて、家の仕事場に着くまで歌詞は見ないようにしました。ワクワク感を最大にして、曲を作る直前に歌詞をパッと見て、冒頭のメロディが思い浮かび、いっきに曲を書き上げました。
しかし、サビに行く前に転調を戻すのが難しくて、そこで苦戦しなければ、(B面『TAKING OFF!』の作曲を含めて)2時間くらいで終わったんですけど。最終的には3時間で作り終えて眠りにつきました」
アレンジを託されたミッキー吉野がサビに戻る時の転調をオシャレに仕上げて、スローだった曲調のテンポを速めたことで、主題歌は完成した。だが、タケカワさんは約20年もの間、ずっと「松本先生に謝りたい」という思いを心の中に抱えつづけていた。