1961年3月。研修期間をへて、晴れて初フライトを踏んだ頃の田中敬子

1961年3月。研修期間をへて、晴れて初フライトを踏んだ頃の田中敬子

毎回「出張費」が支給された 

 前述の通り、当時の日航は最新鋭のダグラスDC8を導入したとはいえ、すべての旅客機がジェット機に様変わりしたかと言うとそうではなく、整備の劣る旧式のプロペラ機も併用していた。故障も多かったが、それでも大事故を未然に防いだのは、9年前の「もく星号墜落事故」の教訓もそうだが、真珠湾攻撃からミッドウェー海戦まで戦った藤田怡与蔵や、同じくミッドウェー海戦で米軍機の銃撃を受けながらも墜落を免れたことで知られる迫守治といった、歴戦の海軍軍人の多くが、戦後は日本航空のパイロットとしてコックピットに座っていたことも無関係ではなかっただろう。そんな伝説のキャプテンが操縦する旅客機に、採用半年の新人スチュワーデスが搭乗していたのである。 

 とはいえ、いくら新人と言っても、報酬だけは破格だった。1961年の大卒の初任給が12900円という時代に、日航に就職したばかりの敬子の月給は13000円。その上、パーディアム(出張費)が1回の就航につき20003000円(現在の価値で約56万円)も付いた。現地の安い店に出入りさせないためで、常々「お前たちは日の丸を背負っていることを忘れるな」と上司に厳命されもした。考えてみれば、敗戦から11年しか経っていないのである。 

 それでも、出張費を使うことは稀だった。 

「アメリカに飛ぶ北回りのときなんか、アラスカのアンカレッジ経由で行くんだけど、寒いから、外になんか出たくない。ホテルの中のレストランで簡単にすますでしょう。お金なんか使わないんです。ヨーロッパ航路の南回りは、確かパキスタンのカラチ経由だったかな。暑くて暑くて外に出られたもんじゃない。だから、お金が随分と貯まって仕方なかった」(田中敬子) 

 敬子の実弟の田中勝一は、姉が海外航路から帰ってくるたびに、高価なお土産を持って帰って来ていたことを記憶している。 

「日本では到底買えないような珍しいお菓子とか、服なんかもありましたかね。海外から帰ってくると、時々そういった土産を買って帰って来たのを憶えています。だって、こないだまで予備校に通ってたのが、いきなり高給取りですから、見てるこっちも不思議でしたよ」 

 さらに、こうも言う。 

「昔からスチュワーデスの給料ってかなり良かったんです。でも、忙しくて遊ぶどころじゃなかったと思うんで、ほとんどお金は使ってないんじゃないかな」

関連記事

トピックス

体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
(公式HPより)
《確信犯?偶然?》山下智久主演『ブルーモーメント』は『コード・ブルー』と多くの共通点 どこか似ていてどこが似てないのか
NEWSポストセブン
タイトルを狙うライバルたちが続々登場(共同通信社)
藤井聡太八冠に闘志を燃やす同世代棋士たちの包囲網 「大泣きさせた因縁の同級生」「宣戦布告した最年少プロ棋士」…“逆襲”に沸く将棋界
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
睡眠研究の第一人者、柳沢正史教授
ノーベル賞候補となった研究者に訊いた“睡眠の謎”「自称ショートスリーパーの99%以上はただの寝不足です」
週刊ポスト
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン