牛が命をかけて生み出す牛乳。搾乳しても大量に廃棄されている(写真/アフロ)

牛が命をかけて生み出す牛乳。搾乳しても大量に廃棄されている(写真/アフロ)

1kgあたり10円値上げしても酪農家にとっては大赤字

 生産コスト上昇に北海道では昨年11月、飲用向け生乳の価格を1kgあたり10円引き上げた。それでも酪農家の経営危機に歯止めはかからない。

「牛乳以外にもチーズやバターなど乳製品が相次いで値上げされていますが、コストで考えれば1kgあたり20〜30円は上がっている。10円では値上げ幅が足りず、出荷するごとに赤字が増していく」

 しかも、値上げをすることで牛乳・乳製品離れは加速し、国内の酪農家はまさに負のスパイラルに陥っている。さらに、日本の乳製品生産の現場は大きな矛盾を抱える。“牛乳余り”が酪農家を苦境に陥れている一因であるにもかかわらず、実は海外からの乳製品の輸入量が高止まりしたままなのだ。

「日本は生乳換算で年間約1200万トンの消費量があり、そのうち輸入は約450万トンを占めます」

 つまり消費量の約3分の1を輸入しておきながら、国内酪農家には生産を抑制させていることになる。なぜそのような矛盾が起きているのか。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが指摘する。

「国の責任で乳製品を輸入しているのだから、国内で余ったら輸入を減らせばいい。ところが国は『国際約束の“カレント・アクセス”“ミニマム・アクセス”として最低数量の輸入義務がある』『国家貿易として国が約束したものを簡単に削減するということになると他国からクレームが来る、あるいはペナルティーを科せられる恐れがある』と言い張って輸入を続けている。

 これは本来、低い関税で輸入できる枠であり、枠を使い切ることは義務ではない。輸入しても売れないのに、むりやり輸入している状態です」

(写真/アフロ)

(写真/アフロ)

 実際にカレント・アクセスとして国の管理のもと輸入している乳製品は、生乳換算で13.7万トンにとどまり、「国としての輸入をやめたからといって、日本の酪農家がただちに生乳を捨てずに済むわけではない」(清水池さん)というが、少しでも輸入を国内産の生乳に置き換えられるなら、それに越したことはないはずだ。

「政府は1995年度から、国内の生乳の過不足にかかわらず、カレント・アクセス枠全量の13.7万トンを輸入し続けてきた。農水省によると2021年の国内の生乳生産量(乳製品向け)は全国で354万トン、北海道は318万トン。つまり国による輸入量は全国の生産量と北海道の生産量のそれぞれ約4%に相当します。

 これは決して小さくはない数字。アメリカやEUはせいぜい1〜2%程度で、苦境に立つ国内酪農家から批判や疑問の声が上がるのは当然です」(鈴木さん・以下同)

※女性セブン2023年4月27日号

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