パーソナルスペースはその距離によって4つに分類される。自分の身体を中心に一番近いのが密接距離であり、0~45cmの範囲だ。身体に触れることができる距離であり、『ラストマン』では福山さんが演じる皆実が盲目のため、大泉さん演じる刑事がアテンドするシーンが多い。2人の間のこの距離は、密接距離とよばれるインティメットゾーンだ。
密接距離は家族や恋人、信頼する相手だけが入れる距離になる。盲目という設定からおのずと密接距離になるのだが、この距離間だけで、凸凹だったバディの心理的な距離がどんどん近づいていくとイメージできる。物理的な距離が近ければ、そこから信頼感や温かさも伝わりやすいのだ。捜査の時も2人は手を伸ばせば届くほどの距離にいる。これは個体距離とよばれるパーソナルゾーンで、友人間で取られるような距離だ。パーソナルスペースの近さは、無敵のバディ誕生への布石にもなっている。
『教場0』の木村さん演じる風間が取る距離はまるで違う。指導官と新人刑事という組合せから、2人の間には社会距離と呼ばれるソーシャルゾーンが存在する。その範囲は1.2~3.6mだ。ドラマでは最初から最後まで2人の距離が近づくことはない。たとえ近くても2人の間にはデスクなどが置かれていたり、剣道の竹刀をぶつけ合っていたりする。風間と他の刑事たちとの距離も近くはない。そのため相手を理解しようという心理的な動きや、信頼や尊敬の念が強くなってくという印象が薄くなるのだろう。だがこれがこのドラマの狙いかもしれない。どこかで一気に距離が縮まるとすれば、それこそインパクトが大きいからだ。
パーソナルスペースは人間関係の変化を目に見える形で表してくれる。これからどんな変化が起っていくのか、どちらのドラマもその展開が楽しみだ。