芸能

『教場』と『ラストマン』 「パーソナルスペース」の取り方に見る2つのドラマの決定的な違い

・日曜劇場の『ラストマン』(TBS系)

・日曜劇場の『ラストマン』(TBS系)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、今注目の2つの刑事ドラマについて。

 * * *
 東京・銀座の高級時計店に、白い仮面をつけた男たちが押し入り、ショーケースをたたき割って商品を奪って車で逃走する事件がおきた。銀座の大通りにある店で白昼堂々と行われた犯行に驚かされたが、それから数時間後には男4人の身柄が確保されるというスピード逮捕にも驚いた。フジテレビの「月9」ドラマ『風間公親-教場0-』の風間も、TBSの「日曜劇場」のドラマ『ラストマン-全盲の捜査官-』の皆実もこれでは出番なしだ。

 4月から始まったドラマで特に話題になったこの2つは、両方ともが警察刑事ドラマだが、事件解決までの推理や見せどころがまるで異なる。のちに警察学校で冷徹な鬼教官となる風間公親の刑事時代を描く『教場0』は、主演の木村拓哉(50才)扮する刑事指導官が、新人刑事を風間道場と呼ばれる教育で指導し事件を解決へと導くドラマ。『ラストマン』は福山雅治(54才)と大泉洋(50才)のダブル主演で、全盲の人たらしFBI捜査官を演じる福山が、大泉演じる犯人逮捕のためには手段を選ばない孤高の刑事とバディを組み、聴覚や触覚、嗅覚などを駆使して事件を解決するというドラマだ。

 2つのドラマが与える印象は正反対だ。『教場0』はシリアスで冷たく重い作風のドラマで、映像画面も全体的に暗い印象だ。木村さんはこれまでのドラマとは違い、キムタクらしさを封印しており、明るさや温かさ、優しさを感じるような演技はない。ストーリー的にも視聴後は、勧善懲悪ドラマを見た時のようなすっきり感はない。

 逆に『ラストマン』は福山さんらしさが全開で、演じる皆実広見は『ガリレオ』シリーズで人気となった湯川教授と重なるが、湯川以上に人たらしで社交的で自信家。少々大げさなジェスチャーや演技も多いが、それを大泉さんの抑えた演技による掛け合いによって中和され、テンポのよい、コミカルな雰囲気に変わっていく。痛快な娯楽ドラマとして安心して楽しめるものになっている。

 正反対なのは主演が演じる役のパーソナルスペースの取り方にも表れている。指導官という役とバディでは違うのは当然だが、パーソナルスペースがこのドラマの印象に影響を与えていると思うのだ。人は自分の身体のまわりに、自分だけの空間であるパーソナルスペースを持っており、そこに侵入されると不快に感じ、落ち着かない気分になる。物理的な距離は心理的な距離に影響を与えることになる。

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン